2012 Fiscal Year Research-status Report
環境ストレス応答性選択的スプライシングを介した遺伝子発現制御ネットワークの解析
Project/Area Number |
24770046
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
吉村 和也 中部大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90379561)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境応答 / 選択的スプライシング / 植物 / SRタンパク質 / 環境ストレス |
Research Abstract |
これまでに、シロイヌナズナの2種類のセリンアルギニンリッチ(SR)タンパク質、atSR45aとatSR30が転写因子を含む多様な遺伝子の強光下での選択的スプライシング効率制御に機能することを示してきた。本研究では、環境ストレス応答性選択的スプライシングを介した遺伝子発現制御ネットワークを明らかにすることを目的として、以下の研究を行った。 1.atSR45aおよびatSR30による転写因子の選択的スプライシング制御機構およびその生理的意義 強光ストレス条件下でatSR30により選択的スプライシング効率が制御される遺伝子産物の解析を行った。その結果、種々の環境ストレス対する耐性能の向上に寄与することが報告されているNAC transcription factor (NAC:AT1G52890)から強光下で生成する高分子の選択的スプライシング産物は、一部のイントロンの保持による終止コドンの出現により、C末端側が欠損したタンパク質をコードしていることが明らかになった。したがって、atSR30は強光ストレス条件下でイントロンリテンション型選択的スプラシングのエンハンサーとして、強光ストレス下でのNACの機能変化型産物の生成促進に働いていると考えられた。 2.atSR45aおよびatSR30の細胞内局在性の制御機構 atSR45aおよびatSR30の各ドメインが細胞内局在性に果たす役割を明らかにするために、パーティクルガンにより全長および各ドメインを欠損したatSR45aとRFPとの融合タンパク質をタマネギ表皮細胞に一過的に発現させ、蛍光シグナルの分布を観察した。その結果、スプライシングの場である核スペックルへの局在化には、atSR30では他の既報のSRタンパク質と同様に、C末端側のRSドメインが機能しており、atSR45aではN末端側およびC末端RSドメインの両方を必要とすることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
atSR45aおよびatSR30による転写因子の選択的スプライシング制御機構およびその生理的意義に関しては、選択的スプライシング産物の機能解析と並行して、当該遺伝子の遺伝子破壊株の入手/確立を行なっている。さらに、それらの相互作用因子や新規の環境ストレス応答性スプライシング制御因子の同定も行なっている。atSR45aおよびatSR30の細胞内局在性の制御機構に関しては、核内局在に必要な機能ドメインの同定に成功した。これらの成果は、ほぼ当初の計画通りであり、事実、本研究により得られた成果により多数の学会発表を行い、複数の査読付き雑誌に掲載されている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、当初の計画通りatSR45aとatSR30の細胞内局在性の制御機構や、atSR45aとatSR30により選択的スプライシング効率が制御される遺伝子の生理的役割の解析が進んでいる。さらに、残り1年間での研究に向けた実験材料(遺伝子破壊株の単離、相互作用因子の同定、実験手法の確立など)の準備も進んでいる。また、環境ストレス応答性選択的スプライシングを介した遺伝子発現制御ネットワークの全容解明に向けて、動物において同定された新規選択的スプライシング制御因子のシロイヌナズナ相同遺伝子の機能解析も進めている。 したがって、今後も当初の計画に従って研究を進めていくことで、全容解明に向けた研究の進捗が期待できると確信している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に行ったatSR45aおよびatSR30の細胞内局在性の制御機構に関して、計画よりも順調に実験が進捗したため余剰金が発生した。そこで、環境ストレス応答性選択的スプライシングを介した遺伝子発現制御ネットワークの全容解明に向けて、動物において同定された新規選択的スプライシング制御因子、hnRNPA1、NOVAおよびFOX1の、シロイヌナズナの相同遺伝子(hnRNPA1-1~6)、(NOVA1)および(FOX1-1~3)の種々のストレスに対する発現応答性の解析、およびそれらのT-DNA挿入遺伝子破壊株の環境ストレス耐性能の評価のための消耗品費用として、平成24年度の余剰金を使用する予定である。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Enzymatic and molecular characterization of Arabidopsis ppGpp pyrophosphohydrolase, AtNUDX262013
Author(s)
Ito, D., Kato, T., Maruta, T., Tamoi, M., Yoshimura, K., and Shigeoka, S.
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Journal Title
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
Volume: 76
Pages: 120523-120526
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Subcellular and subnuclear distribution of high-light responsive serine/arginine-rich proteins, atSR45a and atSR30, in Arabidopsis thaliana2012
Author(s)
Mori, T., Yoshimura, K., Nosaka, R., Sakuyama, H., Koike, Y., Tanabe, N., Maruta, T., Tamoi, M., and Shigeoka, S.
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Journal Title
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
Volume: 76
Pages: 120425-120431
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The involvement of Arabidopsis glutathione peroxidase 8 in the suppression of oxidative damages in nucleus and cytosol2012
Author(s)
Gaber, A., Ogata, T., Maruta, T., Yoshimura, K., Tamoi, M., and Shigeoka, S.
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Journal Title
Plant and Cell Physiology
Volume: 53
Pages: 1596-1606
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] An Arabidopsis FAD pyrophosphohydrolase, AtNUDX23, is involved in the flavin homeostasis2012
Author(s)
Maruta, T., Yoshimoto, T., Ito, D., Ogawa, T., Tamoi, M., Yoshimura, K., and Shigeoka, S.
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Journal Title
Plant and Cell Physiology
Volume: 53
Pages: 1106-1116
DOI
Peer Reviewed
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