2013 Fiscal Year Research-status Report
葉の形態の表現型可塑性の分子基盤の解明:環境に応じて葉形を変化させる植物の研究
Project/Area Number |
24770047
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
木村 成介 京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (40339122)
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Keywords | 表現型可塑性 / 葉 / 発生 / 複葉 / 異形葉性 |
Research Abstract |
北米の湖畔に生育する植物ニューベキアは、生育環境に応じて葉の形態を大きく変化させる特徴(表現型可塑性)を持つ。本年度は、下記1~3の具体的な研究項目(目的)のそれぞれについて、以下のような実績をあげた。 1. ニューベキアの葉の形態の表現型可塑性の発生学的基盤の解明: これまでの研究により、ニューベキアの生育環境に依存した葉形変化には植物ホルモンによる制御が関係していることが考えられた。そこで、葉形が変化する条件で栽培したニューベキアの葉原基に含まれる植物ホルモンの定量解析を行った。ニューベキアは、複葉と単葉を生育環境に応答して作り分けていることがこれまでの研究によりわかっているが、単葉を作る条件ではジベレリンやジャスモン酸の量が上昇していることがわかった。実際,ニューベキアにジベレリンを添加すると葉が単葉になることから、これらのホルモンが葉形の制御に重要であることが示唆された。 2. トランスクリプトーム解析による表現型可塑性に重要な遺伝子の同定と機能解析: 前年度までに作成したトランスクリプトーム解析用のライブラリを、次世代シークエンスに供した。de novoアセンブリによる参照配列の作成や網羅的遺伝子発現解析を行い,発現に変動がある遺伝子群を同定した。現在、SOM解析やPCA解析による遺伝子発現パターンに基づくクラスタリングを行っている。 3. 重イオンビーム照射による突然変異体の単離と解析: 重イオンビームを照射したニューベキア個体の形態の確認を行った。様々な温度で生育した個体の形態を観察しているが、矮性の個体は複数みられたものの、葉の形態に異常があるものは残念ながら今のところ見つかっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ニューベキアという生育環境に応答して葉形を変化させる植物を用いて、 葉の形態の表現型可塑性の分子基盤を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、前述の1~3の項目の研究を進めている。1の「ニューベキアの葉の形態の表現型可塑性の発生学的基盤の解明」については、当初予定していなかった植物ホルモンの網羅的定量解析を行い,葉形変化と植物ホルモンの関係を明らかにすることができた。また、2の「トランスクリプトーム解析による表現型可塑性に重要な遺伝子の同定と機能解析」についてはシークエンス解析が終了して、発現に変動がある遺伝子群を同定できた。現在、さらに詳しい遺伝子発現解析を行っている。3の「重イオンビーム照射による突然変異体の単離と解析」については、現在のところ葉形に異常がある個体を見いだす事はできていないが、さらに突然変異体を選抜中である。以上のことから、研究は計画通りに進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で,ニューベキアの示す葉形変化の発生学的基盤はほぼ明らかにできたといえる。また、トランスクリプトーム解析については、基礎となる部分は終了した。今後は、現在得られているトランスクリプトーム解析のデータをさらに詳しく解析するとともに、新しい環境条件などを加えてさらに大規模なmRNA-seq解析を進める予定である。シークエンス量を増やすことでde novoアセンブリの質をあげるだけでなく,さまざまな環境条件における遺伝子発現の変化と葉形変化の相関を明らかにすることで、表現型可塑性に重要な遺伝子や遺伝子ネットワークを同定したい。また、得られた結果を発生学的な知見と合わせて考察することで、ニューベキアの示す葉の形態の表現型可塑性のメカニズムを、分子から生理のレベルまで統合的に理解したい。重イオンビーム照射による突然変異体の単離については、個体数を増やしてスクリーニングすることで、葉形変異に異常がある変異体を同定したい。
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Research Products
(22 results)
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[Journal Article] Comparative transcriptomics reveals patterns of selection in domesticated and wild tomato2013
Author(s)
Koenig D, Jimenez-Gomez J, Kimura S, Fulop D, Chitwood D, Headland L, Kumar R, Covington M, Devisetty U, Tat AV, Tohge T, Bolger A, Schneeberger K, Ossowski S, Lanz C, Xiong G, Taylor-Teeples M, Brady SM, Pauly M, Weigel D, Usadel B, Fernie A, Peng J, Sinha N Maloof J
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Journal Title
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
Volume: 110
Pages: E2655-2662
DOI
Peer Reviewed
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