2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24770057
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日下部 誠 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (40451893)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | リラキシン / 真骨魚類 / 浸透圧調節 / 配偶子形成 |
Research Abstract |
真骨魚類のRLN関連遺伝子の配列情報を魚類のゲノムデータベースより入手した。申請書では「真骨魚類はRLN3のみを保持する」という記述になっているが、近年のシンテニー解析の結果と本研究で行った分子系統解析の結果を合わせて考えると真骨魚類は「リラキシンとしてはRLNとRLN3を保持する」と言い換える必要があることが明らかになってきた。また、RLN3aおよびRLN3bについて本研究で異なる魚種を用いて遺伝子の発現解析したことによって、何を基準に3aあるいは3bにするかということについて再検討する必要があるということが分かってきた。平成25年度の研究によってホルモンの役割についての知見も加えることが出来ればRLN3の分類にも一定の基準を設けることが出来ると考えている。 ウナギ、ニジマス、イトヨを用いて異なる塩分環境で飼育した個体から得られたサンプルを用いてRLN3の発現解析を行った。興味深いことにイトヨの脳でRLN3bに分類される遺伝子発現が環境浸透圧の上昇に伴って増加することが分かった。このことはリラキシンが浸透圧調節に何らかの働きをしている可能性を強く支持する結果であった。しかしながら、ウナギ、ニジマスでは逆に環境浸透圧の上昇に伴ってリラキシン遺伝子の発現が減少傾向にあることから魚種によってリラキシンの役割が異なる可能性も示唆された。平成25年で予定している機能解析の結果が待たれる。 真骨魚類のリラキシンペプチドの合成がまだ完了していないことから、ニジマスの生殖腺にヒトのRLN3を添加しステロイド産生を誘導するかを確認する予備実験を行ったが、カダヤシのようにステロイド産生が誘導される結果は得られなかった。平成25年度に生理学的な実験を行うにあたって真骨魚類のリラキシンを合成することは機能解析を行う上で不可欠なことと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の主な実験計画はRLNとRLN受容体遺伝子の発現解析である。まずRLNとRLN受容体遺伝子のクローニングはウナギのRLNについては既にRLN遺伝子のクローニング終了していたこととウナギの全ゲノム解析のデータベースへのアクセスが可能になったことから遺伝子配列情報はほぼ計画通りに入手すること出来ている。ニジマスについてのクローニングがやや遅れているため、今年度の早い段階でのクローニングを完了することを目指している。 計画以上に進展したのがイトヨのRLNの研究である。イトヨのRLN関連遺伝子の配列はRLNだけではなくINSLペプチド(リラキシンファミリー)の遺伝子配列および発現情報も得ることが出来た。イトヨのRLN受容体についてもRXFP1-4のすべての受容体の遺伝子配列と発現パターンの情報を得ることが出来た。 遺伝子発現解析についてウナギとニジマスで若干の遅れが出ている。ウナギは海水移行したウナギから脳を経時的にサンプリングし、ニジマスについては平成24年度の一年間月1回のサンプリングを行い脳と生殖腺を採取した。また、ニジマスをストレス条件(高密度:低密度)で飼育した後に脳のサンプリングも行った。いずれのサンプリングも平成24年度の終了間際に完了したため、まだ遺伝子の発現解析が終了していない。現在ウナギとニジマスのサンプルを遺伝子発現解析用に核酸の抽出を行っている。イトヨに関しては当初の計画では主要なサンプルと考えていなかったが、脳でのRLN関連遺伝子の発現動態が極めて興味深いことから、ウナギ、ニジマスに先行して解析を進めた。異なる環境浸透圧条件(海水:淡水)でのすべてのRLN遺伝子の発現解析が完了した。現在、イトヨのRLN受容体の発現解析を進めているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度中に学会等で国内外の研究者との話し合いからRLNペプチド合成の情報を得ることが出来た。申請書ではリラキシンペプチドを化学合成する計画にしていたが、極めて合成効率が悪いことが分かってきたことから、現在昆虫細胞を用いたペプチドの合成系を立ち上げている。また、ペプチドを使っての機能解析に関して、機能を検証するうえでの基準となる反応がはっきりしないという問題点を回避するためにノックダウンを行うことによって機能解析をするという方法を行うことも並行して行っていく予定である。ノックダウンを行う魚種は浸透圧調節に関わる可能性が示唆されるデータが得られているイトヨを用いて行うことを考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(2 results)