2013 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病初期に見られる嗅覚障害を引き起す脳内変化
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24770064
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
宮園 貞治 旭川医科大学, 医学部, 助教 (50618379)
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Keywords | 嗅覚障害 / 神経回路 / X11 / アミロイド / 嗅球 / ドネぺジル / アルツハイマー病 / 加齢 |
Research Abstract |
アルツハイマー病は、加齢に伴って記憶や学習障害を伴う神経変性疾患である。この疾患では、記憶や学習の機能を担う海馬においてアミロイドβ(Aβ)が異常に増加・蓄積する。これが引金となって神経回路の機能異常が生じると考えられている。一方この疾患においては、記憶・学習機能の障害が目立たないごく初期から、嗅覚機能に障害が現れる。嗅覚障害についての研究はあまり進んでおらず、不明な点が未だ多く残されている。嗅覚障害に関する知見は、嗅覚検査によるアルツハイマー病の早期診断法の確立への応用が期待できる。本研究では、この嗅覚機能障害が発生するメカニズムの解明を目的とする。実験には、Aβ産生の調節に関与しているタンパク質であるX11の欠損マウスを用いた。 平成24~25年度までに得られた知見を統合すると、嗅覚の一次中枢である嗅球において水溶性Aβの異常な増加が継続すると、加齢に伴って不溶性Aβの異常な蓄積が起こり、嗅球内の神経回路の機能が低下する。その結果、マウスの匂い認知および識別能が低下することが示唆された。 平成25年度には、現在アルツハイマー病の薬剤の1つとして知られているドネぺジル(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)の嗅覚機能の低下に対する効果を調べた。その結果、ドネぺジルを低濃度で鼻腔内に投与すると、低下した嗅覚機能が改善することが明らかになった。また、嗅覚機能が低下する前からドネぺジルを飲水投与すると、不溶性Aβの異常な蓄積が抑制され、嗅覚機能の低下が起こらないことが明らかになった。これは、ドネぺジルが嗅覚機能の低下に対して対処療法的にも予防療法的にも作用することを示唆する。今後、ドネぺジルの2つの作用機序を明らかにすることを目指していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年の研究実施計画通り、アミロイドβの増加・蓄積とそれに伴う嗅球内の神経回路異常を見出し、また、この異常に対するドネぺジルの効果を明らかにしたので、順調に進展していると考える。ただ、見出されたドネぺジルの2つの効果は、どちらも社会的意義が大きいと考えられる。そこで、これら2つの作用機序を明らかにすることを目指して、研究期間を延長する。
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Strategy for Future Research Activity |
嗅覚機能の低下に対するドネペジルの対処療法的および予防療法的作用機序の解明を目指して研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、ドネペジルの作用に二面性があることが明らかになり、これら2つの作用機序の解明を目指して、当初の研究計画を変更したためである。 本研究を推進するための設備備品はほぼ揃っている。そこで、試料調整・解析のために必要な免疫組織化学染色関連・ELISA解析関連・電気生理関連の試薬および消耗品を購入する。また、研究成果発表のための交通費・宿泊費として使用することを計画している。
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