2012 Fiscal Year Research-status Report
核ゲノムデータを用いた条鰭類の系統解析に向けて:相同遺伝子選定パイプラインの構築
Project/Area Number |
24770070
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 潤 東京大学, 大気海洋研究所, 研究員 (10596779)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 全ゲノム重複 / 真骨類 / 分子系統 |
Research Abstract |
1. 解析パイプラインの完成:条鰭類の高次系統解析に有用な相同遺伝子を選定する解析パイプランンを作成した.このパイプラインは,国際データバンクから BLAST 検索によって得られた類似性の高いタンパク質遺伝子データについて遺伝子系統樹を構築し,四足類 (Human, Chicken, Xenopus) と真骨類 (Zebrafish, Cod, Medaka, Stickleback, Tetraodon, Fugu) の相同遺伝子を選定するものである.解析マーカを選定するだけでなく四足類と真骨類間の相同遺伝子を選び出すものであるため,系統解析だけでなく多くの比較ゲノム研究に有用なものである. 2. データベースの完成:解析パイプラインによる解析を行い,四足類と真骨類からなる確実なオーソロガス遺伝子グループ を 7019 見いだし,これをデータベース化した.これらのうち 1040 オーソロガス遺伝子グループでは真骨類特異的全ゲノム重複由来の重複遺伝子が残されていた一方で,残りの 5979 オーソロガス遺伝子グループは,Zebrafish が分岐する以前にパートナー遺伝子を失っていた. 3. 系統解析に有用な遺伝子: 後者のグループで解析に用いた脊椎動物 9 種すべてが 1 つの遺伝子を保持していた 1241 オーソロガス遺伝子グループは,系統解析に有用な遺伝子グループと考えられる. 得られた成果を,日本進化学会で発表した.この内容をさらに発展させたものを,現在論文としてまとめている段階である. 井上 潤.真骨魚類ゲノムの進化特性: トランスクリプトーム相同遺伝子データベースの構築.日本進化学会年会.首都大学東京 (2012 年 8 月).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成 24 年度の研究計画として,1. 相同遺伝子選定パイプラインの強化,2. ゲノムデータ解読の準備をあげた. 1. に関しては「研究実績の概要」にもあげたように,当初予想した以上の成果を上げることができた.これは,申請者が解析と論文作成を重点的に行うとともに,共同研究者である佐藤と西田による活発な議論によるところが大きい.実際に,成果を学会とで発表しただけなく,論文作成を行うまで研究は進んだ.この解析の進展によって,多くの論文トピックが明瞭となったとともに,2 に示したデータ解読の指針をたてることができた. 2. に関しては,情報収集の段階でとどまっている.これは意図的なものである.ゲノムデータ解読の技術は飛躍的な成長を遂げているため,ゲノムデータの開始を次年度まで見送った方が良いと判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成 25 年度以降の計画として,1. 相同遺伝子選定パイプラインの完成,2. トランスクリプトームデータの解読,3. 系統解析とデータの配信,をあげている. 1. に関しては,これまでに相当な成果を上げている.今後解析に加えるデータを増やすとともに,より解析精度をあげるとともに解析のスピードアップをはかることが目的である. 2. に関しては,申請者がこの 4 月から所属している沖縄科学技術大学院大学は理想的な環境と言える.ゲノムデータ解読の機器がそろっているだけでなく専門の技術者を擁しているため,今年度に飛躍的な進歩が確実である. 3. に関しても,沖縄科学技術大学院大学は理想的な環境と言える.巨大データベース配信のためのサーバが整っているだけでなく,IT を専門とした技術者がそのメンテナンスを行っている.現在作成を行っている論文で使用しているデータベースもこちらから配信する予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成 25 年度の研究費の使用計画として,交付申請書では物品費 920,000 円,旅費 30,000 円,その他 50,000 円を提示した. 物品費は平成 24 年度からの繰り越し研究費と合わせて,上記「今後の研究の推進方策 2. トランスクリプトームデータの解読」で大半を使用する予定である.申請者が現在所属する沖縄科学技術大学院大学では,トランスクリプトームデータを含むゲノムデータ解読を,ランニングコストのみで請け負う精度が確立している.このシステムを用いることで,アロワナ類やカライワシ類,アミア,チョウザメ類など数種のトランスクリプトームデータ解読を行う予定である. 旅費は,国内外で行われる学会に出席し,これまでに得られた研究成果を発表するのに使用する. その他に関しては,主に論文投稿に関わる費用 (掲載料や英文校閲料) に使用する.
|
Research Products
(1 results)