2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24770072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
狩野 泰則 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (20381056)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / パプア・ニューギニア / 腹足類 / 分類学 / 軟体動物 / 両側回遊 / 島嶼河川 |
Research Abstract |
熱帯・亜熱帯の沿岸河川には、1)淡水で孵化した幼生が海へ下り、2)数週間から数ヶ月かけ成長したのち、3)河口で着底して川を遡る「両側回遊」を行う動物が卓越し、極めて高い種多様性を示す。これら両側回遊動物は,成体が淡水に生息するにも関わらず幼生期に海流分散し、また小卵多産のいわゆるr戦略をとることで、容易に新環境へ進出、地理的分布を拡大すると考えられる。本課題では、付加成長する殻をもつ点で優れた研究材料である貝類を用いて、熱帯性両側回遊動物において初となる多角的かつ全球的な自然史研究を行い、同生活環が島嶼河川生態系多様性の創出・維持機構に果たす極めて重要な役割を明らかにする。 平成24年度の実施内容は下記の通りである。1)分子・形態情報の対比による両側回遊種の種多様性把握:初年度は,パプアニューギニアで開催されたパリ自然史博物館主催の多様性調査に参加し、アマオブネ類ほか腹足類の標本を採集した。約20日間の滞在により周辺の種多様性を完全に網羅すべく徹底的な調査を行った。2)世界各地での過去の調査で得られた標本群からDNAを抽出、COI遺伝子他の相同塩基配列を増幅し,塩基配列を決定した。2)沖縄県・鹿児島県ならびにタイ国クラビ県において、陸水性・汽水性・海性腹足類の生態データ収集等を行った。3)神奈川県三崎においてアマオブネ類卵嚢に対する捕食を検討し、河川環境における捕食との比較のもと論文として出版した。4)中生代のアマオブネ類卵嚢様化石について検討し、これがゴカイの棲管であることを示す論文として出版した。5)両側回遊種ならびに近縁の海産種について、遺伝的解析および初期発生様式から海流分散の程度を推定し、学会大会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年11月、ニューギニア・マダンでの多様性調査(パリ自然史博物館主催)に参加した。当初、この調査で得られた大量の両側回遊性貝類標本は、平成24年度内に東京大学大気海洋研究所での実験に用いる予定であったが、試料輸出に関する取り決めが変更となり、パリ経由で日本に到達するのは平成25年度の前半となる見込みである(下記)。同試料をデータ収集に用いることが出来なかったため、当初予定していた実験・出版計画からは順序を大きく変更することとなったが、新規生態データの収集と出版、発生及び分子データの収集など、異なるアプローチによる進展が十分にあったと自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の3カ年のうち2年目となる次年度は、アマオブネ科ならびにトウガタカワニナ科を中心として、1)分子・形態情報の対比による両側回遊種の分類、2)地理的分布および各地域での種多様性の把握、3)種間系統樹の構築、4)蓋を用いた初期発生と幼生浮遊期間の推定、の4項目についてデータを取りまとめ、出版に向けて原稿を準備したいと考える。またオーストラリア博物館での試料調査ならびにシドニー近郊での新規標本採集を行い、分類学的再検討および地域集団比較に供する。さらに、沖縄県での野外調査により、特にトウガタカワニナ科貝類の初期発生について情報を蓄積する予定である。なお成果発表の場として、2013年7月にポルトガルのアゾレス諸島で開催される軟体動物国際会議への出席を予定している。最終年度には研究計画のその他の項目について完了する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年11月、ニューギニア・マダンでの多様性調査(パリ自然史博物館主催)に参加した。当初、この調査で得られた大量の両側回遊性貝類標本は、平成24年度内に東京大学大気海洋研究所での実験に供することができる予定であった。しかしながら、パリ自然史博物館とニューギニアの所管官庁との取り決めにより、同調査で得られた標本は全て一度パリにコンテナ輸送(船便)し、その後各国の研究者に分配される事となった。年度初めの情報では、平成25年1月から2月頃標本を入手できる予定であったが、現在の情報では試料の日本到着は早くとも平成25年5月以降となる見込みである。同ニューギニアからの試料を入手次第、実験を開始したい。またこれに伴い、実験補助謝金の支出と関連の消耗品の購入を行う。
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