2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24770072
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
狩野 泰則 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (20381056)
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Keywords | 国際研究者交流 / 腹足類 / パプア・ニューギニア / 分類学 / 軟体動物 / 両側回遊 / 島嶼河川 |
Research Abstract |
熱帯・亜熱帯の沿岸河川には、1)淡水で孵化した幼生が海へ下り、2)数週間から数ヶ月かけ成長したのち、3)河口で着底して川を遡る「両側回遊」を行う動物が卓越し、極めて高い種多様性を示す。これら両側回遊動物は、成体が淡水に生息するにも関わらず幼生期に海流分散し、また小卵多産のいわゆるr戦略をとることで、容易に新環境へ進出、地理的分布を拡大すると考えられる。本課題では、付加成長する殻をもつ点で優れた研究材料である貝類を用いて、熱帯性両側回遊動物において初となる多角的かつ全球的な自然史研究を行い、同生活環が島嶼河川生態系多様性の創出・維持機構に果たす極めて重要な役割を明らかにする。 平成26年度の実施内容は下記の通りである。1)分子・形態情報の対比による両側回遊種の種多様性把握:初年度、パプアニューギニアでの多様性調査に参加し、アマオブネ類ほか腹足類の標本を採集した。本年度に入り、パリ博物館経由でその際のサンプルが到着したので、形態・分子解析を開始することができた。データは論文化に向けて現在取りまとめ中である。2)沖縄県およびオーストラリアのシドニー周辺において、陸水性・汽水性・海性腹足類の生態データ収集等を行った。3)両側回遊種ならびに近縁の海産種について、遺伝的解析および初期発生様式から海流分散の程度を推定し、18th World Congress of Malacology(アゾレス諸島・ポルトガル)などの学会大会にて複数件の発表を行った。4)両側回遊種を含めたアマオブネ類・スナウミウシ類の進化について検討し、学会発表ならびに原稿投稿を行った。5)河川上流・中流域から得られたアマオブネ類の原殻ならびに後成殻について、ストロンチウム/カルシウム比の元素分析を行い、単一個体における回遊の証拠を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年11月、ニューギニア・マダンでの多様性調査(パリ自然史博物館主催)に参加した。当初、この調査で得られた大量の両側回遊性貝類標本は、平成24年度内に東京大学大気海洋研究所での実験に用いる予定であったが、試料輸出に関する取り決めが変更となり、パリ経由で日本に到達したのが平成25年10月下旬となった(下記)。同試料をデータ収集に用いることが出来なかったため、当初予定していた実験・出版計画からは順序を大きく変更することとなったが、新規生態データの収集と出版、発生及び分子データの収集など、異なるアプローチによる進展が十分にあったと自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間3カ年のうち最終年となる次年度は、アマオブネ科ならびにトウガタカワニナ科を中心として、1)分子・形態情報の対比による両側回遊種の分類、2)地理的分布および各地域での種多様性の把握、3)種間系統樹の構築の3項目についてデータを取りまとめ、出版に向けて原稿を準備したい。また、4)オーストラリアおよびニューギニアからの試料について実験解析を進める。さらに、5)沖縄県および鹿児島県での野外調査により、特にトウガタカワニナ科貝類の初期発生について情報を蓄積する予定である。6)ニューギニアでの再調査も予定している。本年6月にKavieng周辺でパリ自然史博物館の総合調査が実施されるのでこれに参加し、先のMadangからの試料と比較する。7)元素分析の結果に基づき、出版準備を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年11月、ニューギニア・マダンでの多様性調査(パリ自然史博物館主催)に参加した。当初、この調査で得られた大量の両側回遊性貝類標本は、平成24年度内に東京大学大気海洋研究所での実験に用いる予定であったが、試料輸出に関する取り決めが変更となり、パリ経由で日本に到達するのは平成25年10月下旬となった(下記)。同試料をデータ収集に用いることが出来なかったため、当初予定していた雇用・実験計画からは順序を大きく変更することとなった。 今年度は、ニューギニア・マダンからの到着試料について解析するための人件費・謝金、試薬など消耗品費を割り増し、研究を進める。
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