2012 Fiscal Year Research-status Report
新規アポスポリー制御遺伝子を用いた陸上植物の異形世代交代を司る制御機構の解明
Project/Area Number |
24770077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
榊原 恵子 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90590000)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 陸上植物 / 世代交代 / アポスポリー / 転写因子 / 次世代シーケンサー |
Research Abstract |
陸上植物はn世代と2n世代とで異なる発生プログラムを持ち、それを繰り返し形成する異形世代交代を行うが、申請者は2n世代からn世代への切換えのスイッチとして働く遺伝子を発見した。本遺伝子はホメオドメインを含む転写因子をコードするKNOX2遺伝子であり、本年度はこれを報告した論文を執筆し、その成果を2013年3月付けでサイエンス誌に掲載された。 本年度は転写因子であるKNOX2遺伝子の標的遺伝子を探索すべく、1)トランスクリプトーム解析、及び2)クロマチン免疫沈降シーケンシング(ChIP-seq)解析の準備を行った。1)ではKNOX2遺伝子機能欠損株をバックグラウンドにエストロジェンを添加することでKNOX2遺伝子を誘導できる導入DNAを導入し、エストロジェン添加時と無添加時で異なる発現様式を示す遺伝子をKNOX2遺伝子の標的候補とする予定であり、現在までに、KNOX2遺伝子機能欠損株にエストロジェンの添加によりKNOX2遺伝子を誘導できる形質転換体を得た。 2)ではKNOX2タンパクが結合する遺伝子領域をChIP法により探索し、その近傍の遺伝子をつきとめることで、KNOX2遺伝子の標的候補を探索する予定である。しかし、KNOX2タンパク自身は核移行配列を持たず、同じくホメオドメインを含む転写因子であるBELLタンパクと複合体を形成し、BELLタンパクに含まれる核移行配列により核へと移動し、転写因子として機能できると考えられている。このことから、KNOX2タンパクの標的遺伝子を探索する際にはBELLタンパクとの複合体の標的遺伝子を探索する必要がある。申請者はヒメツリガネゴケゲノム中には4個のBELL遺伝子が存在することを明らかにし、そのうちの3個が2n世代で発現することから、これらがKNOX2タンパクと複合体を形成して機能する可能性があることをつきとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はKNOX2遺伝子が2n世代からn世代への切換えのスイッチとして働くことを示した最初の研究報告をまとめ、論文を執筆したため、そのための最終データ解析、論文執筆、及びrevise対応に集中する必要があった。そのため、当初の予定では、KNOX2タンパクの標的遺伝子をトランスクリプトーム解析及びChIP-seq解析により探索し、候補遺伝子を得る予定であったが、その準備段階である、解析に用いる形質転換体の作出にとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は1)トランスクリプトーム解析と2)ChIP-seq解析により、陸上植物の異形世代交代を制御する転写因子KNOX2の標的遺伝子を単離し、その機能解析を行う予定である。 現在までに、トランスクリプトーム解析に使用するKNOX2遺伝子の機能欠損株にエストロジェンの添加によりKNOX2遺伝子を誘導できる形質転換体を得た。これを大量に培養し、KNOX2遺伝子の機能している2n世代の組織においてエストロジェンを添加した2n組織とその溶媒のみを添加した2n組織を調整し、それぞれからライブラリーを作成し、次世代シーケンサーにより網羅的に配列を決定し、2つのライブラリーを比較することで、KNOX2遺伝子発現時特異的に発現する遺伝子を網羅的に探索する。 また、KNOX2タンパクはBELLタンパクと複合体を形成し、核に移行して転写因子として機能する。KNOX2タンパクと複合体を形成する可能性のあるBELL遺伝子は3個あることがわかったので、実際に細胞内で相互作用するか、BiFC法によって決定し、その組み合わせでBELL遺伝子とKNOX2遺伝子とを共発現させた際にKNOX2タンパクの結合する領域を次世代シーケンサーによって決定する。 以上によって得られたKNOX2遺伝子の標的候補遺伝子をヒメツリガネゴケ、及びシロイヌナズナにオーソログ遺伝子がある場合はその機能解析を行い、KNOX2遺伝子がどのような遺伝子系を制御することで異形世代交代を制御しているか明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時の予定ではKNOX2タンパクの標的遺伝子候補単離のためのトランスクリプトーム解析とChIP-seq解析のうち、次世代シーケンサー解析を外注する予定であったが、所属の変更に伴い、新しい所属先でイルミナ社の次世代シーケンサーMiseqを導入したので、これを用いてシーケンスを行うこととする。そのライブラリー作製の為の試薬、消耗品を購入する。 標的遺伝子候補が得られた後、ヒメツリガネゴケでの機能解析のためのヒメツリガネゴケ培養用具及び形質転換試薬を購入する。また、標的遺伝子候補のオーソログがあれば、そのT-DNAタギング系統を購入し、その機能解析を行う。
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[Journal Article] KNOX2 transcription factors regulate the haploid to diploid morphological transition in land plants2013
Author(s)
Sakakibara, K., Ando, S., Yip, H. K., Tamada, Y., Hiwatashi, Y., Murata, T., Deguchi, H., Hasebe, M., and Bowman, J. L.
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Journal Title
Science
Volume: 339
Pages: 1067-1070
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Physcomitrella WOX genes are necessary for the formation of stem cells from differentiated leaf cells2012
Author(s)
Sakakibara, K., Aoyama, T., Ando, S., Sato, Y., Sugimoto, N., Ohshima, M., Murata, T., Nishiyama, T., Hasebe, M.
Organizer
The 4th NIBB-MPIPZ-TLL Symposium Arabidopsis and Emerging Model Systems
Place of Presentation
愛知、岡崎
Year and Date
20121118-20121121
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[Presentation] Physcomitrella WOX genes are necessary for the formation of stem cells from differentiated leaf cells2012
Author(s)
Sakakibara, K., Aoyama, T., Ando, S., Sato, Y., Sugimoto, N., Ohshima, M., Murata, T., Nishiyama, T., Hasebe, M.
Organizer
第3回Marchantia workshop
Place of Presentation
阿蘇、熊本
Year and Date
20121115-20121117
Invited
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[Presentation] Physcomitrella WOX genes are necessary for the formation of stem cells from differentiated leaf cells2012
Author(s)
Sakakibara, K., Aoyama, T., Ando, S., Sato, Y., Kurata, T., Murata, T., Nishiyama, T., Hasebe, M.
Organizer
Moss 2012
Place of Presentation
New York, USA
Year and Date
20120615-20120617
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