2013 Fiscal Year Research-status Report
日本列島産トカゲ属の複数交雑帯の比較解析に基づく生殖隔離進化プロセスの研究
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24770080
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡本 卓 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80554815)
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Keywords | マイクロサテライト / 分子系統地理解析 / 交雑帯 |
Research Abstract |
種多様性は生物多様性の主要な要素のひとつであり,近縁種間の生殖隔離は,これを形成・維持する主要なメカニズムである.本研究は,日本列島・伊豆諸島のトカゲ属 (Plestiodon) 3種4系統に見られる4箇所(伊豆半島・中部・近畿・八丈島の各地)の交雑帯を題材として,生殖隔離の進化プロセスの一端を解明することを目的とする.本研究では,高分解能のDNAマーカーを用い,各交雑帯における遺伝子流動動態の定量化を試みる.また,集団遺伝・系統地理学的解析により生殖隔離のタイプ・各系統の間の分岐年代および交雑帯の形成年代を推定する.これらのパラメータと遺伝子流動の動態との関連を調べることで,一般的な異所的種分化における生殖隔離の進化プロセスを考察する. 平成25年度は,標本が不足している地域に重点を置いての標本採集,交雑帯解析に使用するDNAマーカー(マイクロサテライト,SSR)開発のためのデータ解析と実験,交雑帯形成プロセス推定のための標本採集と系統地理解析を行った.マーカー開発については,次世代シーケンサーを用いて取得したデータを解析し,マーカー候補領域の洗い出しとPCR実験を行い,15遺伝子座のマーカー領域を得た.また,SSRのゲノム中の組成などを,他の脊椎動物のデータと比較した.これらについて,現在論文執筆を進めている.加えて,対象種の分布域全体の標本についてDNAデータの収集と分子系統地理解析,交雑帯の遺伝構造の比較のための予備的解析を行った.学会発表については,国内の学会に加えて,ベトナムで開催された東アジア各地の研究者の集まる国際会議に出席し,成果発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サンプリングについては,八丈島の一部地域を除いて十分なサンプルを揃えることができた.SSRマーカー開発は,実験条件の検討に少し時間がかかったが,概ね順調に進み,論文執筆に着手している.予備的な解析を行う段階には至っているが,昨年度の遅れの影響もあって,交雑帯の遺伝構造の解析についてはやや遅れている. また,簡便な方法で抽出したDNAサンプルの一部に劣化が生じており,再抽出が必要となっている. 分子系統地理解析については概ね順調に進み,十分なデータを得て,論文執筆に必要な解析を行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,やや遅れているSSRマーカーによる遺伝構造解析が最も大きな課題となる.この点については,新たな試薬・実験手法の導入を検討し,データ収集の効率化を図る. 野外調査については,本州内での追加採集はほとんど必要ないが,八丈島については,外来種-在来種関係の経時変化のモニタリングとして,2回程度行う. 得られた成果について,日本動物学会,日本爬虫両棲類学会などで発表し,関連分野の研究者との意見交換を行う.また,マイクロサテライトマーカー開発,日本列島の全域のトカゲについての分子系統推定と年代推定についての論文を完成させ,交雑帯の比較解析についての見通しを早い段階で立てる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
野外調査に関して,調査対象地域の一部変更などにより,当初の予定よりレンタカーの使用量が少なくなった.また,予定していた論文執筆が終了していないため,英文校閲料が生じなかった. 次年度にレンタカーの使用量が増加する見込みがなく,一方で当初見込んでいたよりも物品費(特にDNA実験費用)が高額になっているため,その分の費用は適宜DNA実験に使用する.英文校閲に予定していた費用については,現在執筆中の論文の執筆後に,予定通り英文校閲料として使用する.
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Research Products
(4 results)