2012 Fiscal Year Research-status Report
カレイ目魚類のミトコンドリアゲノミクス:高次系統解析とゲノム構造の進化
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24770082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 崇 独立行政法人国立科学博物館, 標本資料センター, 特定非常勤研究員 (60436516)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ミトコンドリアゲノム / カレイ目 / 遺伝子配置 / 分子系統 / 分子進化 |
Research Abstract |
初年度である 2012年度は,カレイ目魚類の包括的系統解析の第一段階として,目内で最も種数が多く,形態から生態まで多様性に富むダルマガレイ科魚類に焦点を当て,試料採集からミトコンドリア(mt)ゲノム全長塩基配列データの収集,そして予備的な分子系統解析を進めた.その結果,科内を網羅する 15属 23種の mtゲノム全塩基配列を決定することができた.これまでに,本科魚類の一種であるザラガレイ(Chascanopsetta lugubris)の mtゲノムには,脊椎動物一般のものとは異なる特異な遺伝子配置があることが判明していた. 本研究でダルマガレイ科を網羅的に解析したところ,扱った全魚種の mtゲノムにおいて,複数の領域から tRNA遺伝子が移動し,また2つのタンパク質遺伝子の位置が入れ替わるなど,魚類を含む脊椎動物全体で共有される遺伝子配置とは大きく異なる配置変動の例を発見した.カレイ目の別科と外群も含めた 40種ほどの予備系統解析の結果に,遺伝子配置情報を合わせると,この配置変動は本科魚類が他の科と分化するタイミングで生じたものと推定され,科の単系統性を支持する強力なマーカーとなることが示唆された.さらに Crossorhombus 属など複数の種では,科内で共有される変動以外にも,それぞれ独自の遺伝子配置変動が生じていることが明らかとなった.また外群としてもちいたコケビラメ科の魚種にも,別のタイプの変動を発見した. これらの結果から,カレイ目魚類には他にもまだ多くの遺伝子配置が見つかる可能性が高まった.本科のように,科内で複数タイプの配置変動が生じている例は少なく,今後 mtゲノム遺伝子配置の進化プロセスを解明する上で,非常に良いモデルとなることが期待される.次年度は未解析の科や種の採集・データ収集をより一層進め,mtゲノム構造の進化パターン解明にせまりたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題は3年間の計画で進めており,2012年度から 2013年度前半にかけては解析用試料の収集に力を入れ,早期の採集目標達成を目指していた.現在までのところ,国内外の大学・博物館等の研究者から多くの協力が得られ,また複数回に及ぶ自らの採集(台湾・タイ・駿河湾・南西諸島・土佐湾)によって,カレイ目全 14科中の 13科に関して,当初の予定よりも早く解析に必要な目標数の試料を入手することができた.これにより,次年度以降に計画していた各亜目・科内レベルの系統解析を前倒しで進めることが可能となった. より精密な解析結果を得るために,2013年度も解析用試料の収集は継続する予定である. また計画では,初年度後半から次年度にかけて,遺伝子配置変動が見つかっているダルマガレイ科から12属12種のミトコンドリアゲノム全長配列データを決定する見込みであった.これに関しても,本科から目標を大きく上回る 15属 23種の新規データを決定することができた.それ以外にも,近縁と考えられている科や外群のデータとして6種を加え,約 30種のデータ収集を完了した.これらのデータをもちいて,本来2013年度より進める予定であったダルマガレイ科内の分子系統解析および遺伝子配置解析を実施し,解析に使用した本科魚種のすべてに配置変動が生じていることを明らかにした.さらに,これまでに報告例のない新規遺伝子配置変動を4例発見した.これらの成果は,2012年度日本魚類学会年会において発表した. 以上のことから,本研究課題の現在までの達成度は,当初の予定よりも進んでいると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
試料採集やデータ収集を集中的に行い,初年度終了時までに予備解析まで進めることができたダルマガレイ科に関しては,本科と外群に関する未処理の試料数種から,早急にミトコンドリアゲノム全長配列データを決定する.これらのデータを加え補強された全データセットをもちいて,特異な遺伝子配置の科内での出現頻度や特徴を明らかにするべく,遺伝子配置の比較解析をすすめる.さらに科内を網羅した精密な系統解析を行い,本科魚種の分化過程や遺伝子配置の進化パターンを考察する.これらの結果については,年内投稿を目標に速やかに論文として公表する作業を進めるとともに,学会等での成果発表を積極的に行う. また今年度は,カレイ目内でも特に種数が多く,水産重要魚種を多く含むカレイ科・ヒラメ科・ササウシノシタ科・ウシノシタ科の解析に着手する予定である.年度前半は,そのための試料採集を重点的に行う.採集候補地としては,北海道東部(カレイ科),台湾南部(他3科)等を予定している.採集した試料からのミトコンドリアゲノム全長配列決定を精力的にすすめ,年度後半には複数の科内予備的解析を行うことを目標とする.これらと同時平行的に,本研究課題に必要な試料の収集を今年度で完遂させるべく,国内外の研究機関への採集協力依頼を継続して行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に支給された予算は,ほぼ予定通りに消耗品の購入費用や旅費として使用された.実験用試薬が,業者のキャンペーン価格適用などで通常より安価で購入できたため,年度末の時点で 18,774円の残金が発生した.この金額は,分子実験用試薬には不足,他の消耗品購入のためには過剰であったため,次年度への繰り越しとした. 2年目となる 2013年度は,科内の多様度が非常に高いために,より緻密な解析結果を得るためには試料が不足していると考えられるカレイ科・ヒラメ科・ウシノシタ科・ササウシノシタ科の採集のため,底曳網漁が盛んであり,これら魚種の採集実績のある台湾南西部の澎湖島や北海道東部の漁港へ赴く予定である.このサンプリングに伴う費用と標本の送付に 20万円を使用予定である. 本研究のコアとなるのは,多数のカレイ目魚類ミトコンドリアゲノム全塩基配列決定であり,このためにかなりの消耗品費がかかる.これまでの経験に基づいて,1 種あたりの試薬費および実験に伴うプラスチック・ガラス器具類購入費の単価を推定し(約4万円),その値に全塩基配列の決定が必要となる種数(約 20種)を乗じて総消耗品費を算出し,合計で 80万円を使用する計画である.また,本研究の成果を広く社会に発信するため,学会発表等に必要な費用として 10万円(2回の年会参加を想定),論文発表に伴う英文校閲やカラー原稿・別刷り等の印刷費用として 10 万円(2本の論文を想定)を使用する予定である.以上,2013年度は合計 120万円の予算を使用し,本研究課題を進めていく計画である.
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Research Products
(2 results)