2013 Fiscal Year Research-status Report
ママコナ属における花筒長の多様化と送粉者を介した生態的種分化過程の解明
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24770085
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Research Institution | Osaka Museum of Natural History |
Principal Investigator |
長谷川 匡弘 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (80610542)
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Keywords | ポリネーターシフト / 送粉 / 花形態 / 進化 / ポリネーター / ママコナ属 / スズメガ媒花 / ハナバチ媒花 |
Research Abstract |
平成25年度には1)ママコナ属の花形態の計測及び分布状況の確認、2)ママコナ属の自生地におけるポリネーター調査、3)DNA解析、4)オオママコナ及びヤクシマママコナ自生地での淘汰圧測定、5)調査結果の公表を行う予定であった。1)については、平成24年度に調査出来なかったホソバママコナ、ヤクシマママコナ、ママコナに関して調査を進めることができた。2)の送粉昆虫調査については、主にオオママコナ、ヤクシマママコナの局地的に分布する1種、1変種で進めることができ、特に花形態が特殊化しているオオママコナでは主な送粉昆虫がホウジャク類(スズメガ科)であることを明らかにした。ヤクシマについては天候の影響もあり調査が不十分で、平成26年度に引き続き調査を行う予定である。このほか、ホソバママコナ、ママコナについてはいずれも長舌を持つハナバチ類が主な送粉昆虫であると予測された。3)のDNA解析については、日本産の全種・変種についてDNAサンプルがそろった状況になり、葉緑体のtrnL-F領域について解析を行い、大まかな系統的関係について明らかにした。短い領域しかまだ読めておらず、さらに解析を進める必要がある。これらの結果については、平成26年3月の日本生態学会において公表済みである。このほか、平成25年度には韓国で新たに記載されたM. koreanumについて調査を行うことができ、こちらもホウジャクが送粉に関わっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に本年度調査を進める予定であった、「課題2:ママコナ属の花形態の変異を明らかにする」、「課題3:長花筒または短花筒の分類群の受粉にはどのようなポリネーターが関わっているか明らかにする」の2点については概ね当初の計画通りに進行した。もう1点の「課題4.オオママコナ、ヤクシマママコナを含むママコナ属はどのように進化したか?」については、まだ解析が不十分ながら、日本産ママコナ属の大まかな系統関係については明らかになった。課題2については長筒花をもつオオママコナについて、同属の他種やオオママコナの分布域の周辺の近縁種(シコクママコナ)とも比較することができ、他種に比べ2倍以上長い花筒を持つことを示すことができた。これとは逆に短花筒を持つヤクシマママコナについては、シコクママコナの半分程度の長さの花筒しかなく、顕著に短いことが明らかになった。課題3については、長筒花のオオママコナについて同属の他種と異なり、蛾類(ホウジャク類)が主な送粉昆虫であることを明らかにした。花筒が短いヤクシマママコナについてはまだ調査が不十分であるが、ハナアブ類が送粉に関わっている可能性も考えられえる。課題5の淘汰圧の生育地での測定については、自家受粉率が高く、結果率に個体間で大きな差が見られないため、実施が困難となった。平成26年には、自殖の程度を袋掛け実験などを通して明らかにしたい。 以上より、平成25年度に実施予定であった計画はほぼ予定通りに進行した。課題5の生育地における淘汰圧の測定については、困難なことが明らかになったが、そのほかの課題については概ね当初計画の予定の通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は当初の予定通り、ママコナ属の形態形質、分布状況の補足調査、オオママコナ及びヤクシマママコナのポリネーター補足調査、DNA解析、調査結果のとりまとめ及び公表を行う予定である。ママコナ属の系統関係を明らかにするとともに、オオママコナ、ヤクシマママコナに近縁な種を確定する予定である。このほか、紀伊半島、屋久島、広島、奈良、九州北部等でママコナ属各種の花形態の計測、訪花昆虫調査およびサンプリングを実施する。特にヤクシマママコナについては、平成25年度の調査が悪天候のため十分に行えておらず、26年度は訪花昆虫と花形態について精査し、同属他種と比較して著しく短い花筒を持つこと、主な送粉昆虫を明らかにする。これらの調査結果については平成27年3月の日本生態学会で公表するとともに、論文にまとめていく。 平成25年度には韓国で2012年に記載された花筒の長い種(M. koreanum)について調査を行うことができた。この種も含めたDNA解析を今後実施予定である。この種では、オオママコナと同様に蛾類が送粉に関わっている可能性があり、まったく分布の異なる場所で、ハチ類から蛾類へのポリネーターシフトが起こり、蛾類に対する花形質の平行的な適応が起きている可能性が考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定よりも、効率的に調査を行い旅費を軽減させた。また、当初予定していたよりもデータ整理、入力作業等の人件費を削り、作業の効率化を行った。このため、次年度使用額が生じた。 主に屋久島での再調査や、紀伊半島での分布調査に必要な旅費として使用する予定である。
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