2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24770090
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西田 紀貴 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (50456183)
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Keywords | 核磁気共鳴法 / 電子顕微鏡 / 分子モーター |
Research Abstract |
ダイニンの微小管上の連続的な運動性は、ATPase ドメインのATP 加水分解と連動して、微小管結合ドメイン(MTBD)が高親和性状態と低親和性状態の間をスイッチすることに由来する。しかし、ATPaseドメインとMTBDは15nmの長いコイルドコイル鎖によって隔てられており、ダイニンの微小管親和性を制御する構造メカニズムは不明である。本研究では、MTBDの立体構造および微小管との相互作用を構造生物学的に解析することにより、ダイニンの微小管親和性制御機構を解明することを目的とした。 H24年度までに、コイルドコイル鎖にS-S結合を導入して低親和性および高親和性状態に固定したコンストラクトMTBD-LowおよびMTBD-Highを構築し、NMRによる構造決定を行った。しかし、通常のNOEに基づく距離情報のみでは構造の収束が十分ではなかった。そこでH25年度は、NH結合の磁場に対する配向情報である残余双極子カップリング(RDC)を測定し、RDC情報を拘束条件に加えて構造計算を行うことにより、MTBDの立体構造をより精密に決定した。その結果、得られた構造のRMSD値が向上し、MTBDが6本のαへリックス(H1-H6)と2本のコイルドコイル鎖(CC1、CC2)からなること、MTBD-HighとMTBD-Lowの間ではH1およびCC1の構造が大きく異なることが明確に示された。また、MTBD-Highと微小管複合体の立体構造をクライオ電子顕微鏡により解析し、単粒子解析法に基づく3次元再構成により、分解能9Å(FSC=0.5)の密度マップを得た。得られた密度マップにtubulin dimerおよびMTBD-Highの立体構造をフィッティングし、複合体構造を得ることに成功した。以上の結果より、MTBDの低親和性から高親和性状態への変化においては、CC1のおよびH1の構造変化が誘起され、その結果MTBDに微小管に対して相補的な表面が形成されることにより高い親和性を獲得するというモデルを新たに提唱した。
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