2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞で膜切断を担うESCRT-III複合体線維の構造基盤研究
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24770094
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
帯田 孝之 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (30578696)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | タンパク質 / 構造生物学 / ESCRT |
Research Abstract |
ESCRT-IIIタンパク質複合体は、細胞質分裂の最後のステップである娘細胞間の膜の切断(abscission)、エンドソーム内腔小胞形成時の小胞膜切断、レトロウイルス等が細胞から出芽する際のエンベロープ膜切断等に機能している。これらでは全て、ESCRT-IIIタンパク質複合体から形成される線維によって膜が切断されていると考えられ、その線維形成の起点、及び線維そのものについて、構造生物学的な観点から研究を行い、その詳細を明らかにすることで、その切断メカニズムを説明することを目的としている。 これまでに、酵母および古細菌のESCRT-III遺伝子を計11種類クローニングして、様々なタグを用いて精製するためにベクターに組み込んだ。その後、いくつかの大腸菌を用いてタンパク質の発現を行い、全てのESCRT-IIIタンパク質について精製を行った。その中でいくつかのタンパク質は、高純度で精製することに成功し、結晶化を行っているがまだ良好な結晶は得られていない。また、精製が困難なものに関しては、タンパク質の長さの最適化を行うことや、変異体を作成することで、純度と精製量の向上を目指している。本研究の目的の一つは、ESCRT-IIIタンパク質による線維形成を原子レベルで明らかにすることであるが、そのためにESCRT-IIIタンパク質によるヘテロ二量体の形成、結晶化を行っている。これまでのところ、まだ良好な結晶は得られていないが、今後はいくつかの組み合わせでヘテロ二量体を形成させ、結晶化を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に使用する約20個のタンパク質については、全てクローニング終了し、発現精製まで行っている。その内いくつかに関しては、高純度で精製しており更に収量を増やす予定である。また、精製が困難なものに関しても、タグの種類等の変更を含めた様々な発現系を作成しており、今後より高純度でタンパク質を得ることを目標としている。また、現在までに良好な結晶は得られていないものの、今後更にスクリーニングの数を増やすなどにより、良い結晶を得ることが出来ると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目も引き続きESCRT-IIIタンパク質の結晶化を行っていく予定である。古細菌に存在する4つのESCRT-IIIホモログ間の相互作用は既に明らかなっており(Samson, Obita et al, Science, 2008)、そのヘテロESCRT-III複合体の立体構造を明らかにすることで、ESCRT-III複合体の膜切断活性メカニズムを解明したいと考えている。具体的には、酵母に存在する6個のESCRT-III間のヘテロ複合体の結晶化および構造解析、古細菌に存在する4個のESCRT-III間のヘテロ複合体の結晶化および構造解析を行う。また、NMRやBIAcore、蛍光分光光度計等を用いてin vitroにおける相互作用解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度、三回予定していた放射光施設での利用が、一回であったために予定していた旅費相当分と、放射光施設での消耗品相当分が繰り越しとなった。今年度は、昨年度予定していた分のタンパク質の結晶を得るためにも、結晶化スクリーニング試薬を増やすなどを計画している。
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