2012 Fiscal Year Research-status Report
好熱性真核生物のゲノム情報を基盤とした小胞体関連分解装置の構造生物学研究
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24770102
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
佐藤 匡史 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80532100)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 構造生物学 / 好熱性真核生物 / X線結晶構造解析 / NMR解析 |
Research Abstract |
本研究は、小胞体において糖タンパク質の運命決定を下す小胞体品質管理マシーナリーの分子認識および作動機構の解明を目的としている。 本研究の特徴の一つは、真核生物の中で高い生育温度(約60℃)を持つ好熱カビのゲノム情報を活用することである。そこで平成24年度では、好熱カビの小胞体品質管理マシーナリーを構成するタンパク質素子の網羅的なcDNAクローニング、大量発現系の構築、および結晶化を行った。その結果、幾つかの構成素子の大腸菌での組換えタンパク質の大量発現に成功した。特にタンパク質成熟化に関わるプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)に関して、基質結合に関わるb'-a'ドメインの酸化型および還元型の結晶構造の決定に成功した。これにより、酸化還元に伴うPDIの構造変化に関して有益な知見を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、好熱カビの小胞体品質管理マシーナリーを構成する幾つかのタンパク質素子の大量発現系の構築に成功している。さらに、構成素子の一つであるPDIの酸化型および還元型の結晶構造解析に成功している。以上、総合的に判断しておおむね順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
小胞体品質管理マシーナリーが標的とするモデル基質の調製およびそれを用いた機能解析を行い、その結果を鑑みて、タンパク質複合体のX線結晶構造解析、NMR解析、電子顕微鏡解析などの多角的な構造生物学研究を順次遂行していく。モデル基質の調製は、タンパク質工学的アプローチに加えて、ケミカルバイオロジー的手法も併せて検討する。最近、私たちのグループでは、組換え酵母により安定同位体標識した高マンノース型糖鎖を調製することにも成功している。これをNMRによる相互作用解析に活用することも視野に入れて研究を遂行する。フォールディングセンサーなど柔構造を持つことが推測されるドメインと基質との相互作用解析は主にNMRを用いる。そこでは、アンフォールドタンパク質の解析が可能な分子研の超高磁場NMRを積極的に活用する。一方、ある程度の静的構造を持つことが予想されるドメインの立体構造解析についてはX線結晶構造解析を用いる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度において、好熱カビの小胞体品質管理マシーナリーを構成するタンパク質素子の大量発現系の構築が当初の計画より進展しなかったため、経費の大部分を計上していたNMR解析や結晶構造解析を十分に行えなかった。ただし、本年度末にかけて研究が大きく進捗したため、現在では計画通り研究は進展している。
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