2012 Fiscal Year Research-status Report
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24770113
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
松田 厚志 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所バイオICT研究室, 研究員 (20585723)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超分解能顕微鏡 / クロマチン |
Research Abstract |
遺伝子発現の調節には、細胞核内のクロマチン高次構造を反映した伝播や凝縮などが、重要であると考えられている。しかし、生体内におけるクロマチン構造や凝縮と遺伝子発現の関連性はまだ十分理解されていない。近年、蛍光顕微鏡により20-100nmの超分解能が開発され、蛍光顕微鏡で直接、クロマチン構造を可視化できるようになった。しかし、クロマチン構造と遺伝子発現との関連を研究するためには、抗体染色など多波長の画像を高精度に位置合わせする必要がある。 本計画では、高分解能で共局在を解析するため、約30nmの分解能を持つ超分解能蛍光顕微鏡法であるPALMを、多波長で同時に行う顕微鏡を構築することを目的とする。ナノメートルオーダーの高精度な多色画像の位置合わせシステムを構築するため、予定していた二つの新しい手法の開発を完了した。 1)多波長PALM用のフォーカス面調整装置の開発。PALMでは、垂直(Z軸)方向の情報が少ないため、事前に波長毎のフォーカス面を正確に合わせる必要がある。高い位置再現性を持つステッピングモーターにより顕微鏡の結像レンズ位置を制御することにより、チャネル毎のフォーカス調整システムを構築した。 2)背景補正によるチャネル毎の画像の歪みの解消。1分子解析では、カメラのピクセル毎のゲインのわずかな差がガウス分布近似に影響し、異なるカメラの画像では、カメラ固有の「位置ずれ」が生じることが知られている。本研究では、ピクセルのゲインに加えて、背景の自家蛍光の勾配も補正するプログラムを作成した。自家蛍光は波長毎に異なるため、局所的な「位置ずれ」が積み重なることで「波長固有の歪み」の原因になる。開発したプログラムにより自家蛍光を補正することにより、波長特異的な歪みがなくなった。さらに自家蛍光の補正により、特にノイズの高いサンプルにおいて、PALMの分解能自体も向上したことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請当初は複数のカメラを前後に動かす方法を考えていたが、より軽量な結像レンズを動かす方法に変更することにより、高精度のフォーカス制御が可能になった。さらに軽量化により稼働距離を大きく取ることができ、その結果、あるチャネルのフォーカスだけを大きく変更することが可能となった。フォーカスの可動域が広がることにより、たとえば、サンプルのドリフトマーカーであるビーズが異なるフォーカスに存在しても、同時に撮影することができる。また、このシステムは、ライブイメージングなどでも、異なる分子を異なるフォーカスで同時に追跡できる新しい観察手法として使用できると考えられる。同様に、自家蛍光の補正プログラムは、PALMのみならず、生体イメージングの多くの場面で利用できることを明らかにした。たとえば、この手法を応用して、生きた細胞のタイムラプス画像から自家蛍光を消すことにより、自家蛍光のために観察が困難であったオートファゴソームの動態の観察に成功した(Hamasaki et al. Nature 2013)。この様に、本研究による新技術の開発により、当初の予想を上回る成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、24年度に開発した手法をさらに使用しやすく改良し、分裂酵母クロマチンの微細構造の観察に応用する。転写領域に蓄積する修飾ヒストン(H3K4me3)や、ヘテロクロマチン領域に存在する修飾ヒストン(H3K9me3)などを多波長PALMにより観察し、DNAの構造の違いを解析する。また、PALMを用いれば、30nm繊維が観察可能なので、そのような構造を検証する。また、従来の光活性型蛍光タンパク質よりも蛍光量が大きいと考えられる新しい光活性型蛍光タンパク質を導入して、分解能の向上を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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[Journal Article] Autophagosomes form at ER-mitochondria contact sites.2013
Author(s)
M Hamasaki, N Furuta, A Matsuda, A Nezu, A Yamamoto, N Fujita, H Oomori, T Noda, T Haraguchi, Y Hiraoka, T Yoshimori and A Amano
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Journal Title
Nature
Volume: 495
Pages: 389-393
DOI
Peer Reviewed
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