2012 Fiscal Year Research-status Report
リン酸化プロテオミクスによる新規mTOR下流候補分子群の網羅的同定と機能解析
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24770129
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中津海 洋一 九州大学, 生体防御医学研究所, 学術研究員 (20596837)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | シグナル伝達 |
Research Abstract |
定量的リン酸化プロテオミクス解析を行い、mTORの下流でリン酸化制御を受ける分子として新規に約20分子を同定した。そのうち、フォークヘッド型転写因子K1について特に詳細な解析を行った。マイクロアレイ解析を行ったところmTORの活性に依存して特定のサイトカインの合成に関わることを明らかにし、定量的PCR解析によってもこれを確認した。またクロマチン免疫沈降による解析から、ターゲット遺伝子の上流に結合することも確認した。このことはすなわち、mTORが細胞の栄養状態を感知し下流のリン酸化経路を通じて液性因子を放出することであり、これまでに同様の報告は無く意義深い。さらに、フォークヘッド型転写因子K1は最大で30箇所にも及ぶリン酸化を受けることを明らかにし、そのうち複数の部位がmTORの下流で制御される事を明らかにした。mTORのターゲットサイトとして10箇所に及ぶリン酸化部位について変異体を作製し、その転写活性の変化を確認した。またmTORの下流分子の中には別のリン酸化酵素の活性化を介してリン酸化制御を受けるものも多い。フォークヘッド型転写因子K1は常に核局在であり、一方で細胞質において機能するmTORと局在を異にするため、間接的なリン酸化制御であると考えている。現在はフォークヘッド型転写因子K1を直接的にリン酸化を制御する因子の同定を行っている。また遺伝子改変マウスの作製も進めており、本研究で新規に同定したリン酸化シグナル伝達経路の生理的な意義についても解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フォークヘッド型転写因子K1の振る舞いについて、他のmTOR下流分子とは多くの異なる点が明らかとなった。そのそれぞれについて興味深く、新たなmTORの生理活性に迫っていると言ってよいだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は定量的リン酸化プロテオミクス解析によって同定した約20分子の全てを解析する予定であったが、フォークヘッド型転写因子K1の重要性が明らかになるにつれ、本分子に集中して解析を行うことが生命科学の推進に有用であると考えており、若干の方向修正を行っている。今後はフォークヘッド型転写因子K1の生理的意義の解析を中心に据え、リン酸化制御メカニズムの詳細な解析と、その生理的意義を明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子メカニズムについての解析に加え、マウスを用いた個体レベルの解析についても行っていく。
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