2012 Fiscal Year Research-status Report
脂質分布と膜物性の同時可視化で迫る糸状仮足形成における脂質ラフト動態と機能の解明
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24770135
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岸本 拓磨 独立行政法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 基礎科学特別研究員 (70585158)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 膜物性 / 脂質分布 / 細胞二重膜 / 細胞形態 |
Research Abstract |
脂質ラフトは細胞膜に存在する特定の脂質の集合体であり、細胞形態の制御における細胞骨格と細胞膜の相互作用において重要な機能を果たすと考えられている。本研究では、細胞膜における脂質ラフトの機能を解明するために、糸状仮足形成過程をモデルとして生細胞内における①脂質ラフトを構成する脂質の細胞膜外層と内層の分布の関係、②脂質ラフトにおける膜物性、そして、③脂質ラフトの外内層の脂質分布と膜物性の相関について解明する。 今年度は、細胞膜に特化した観察を行う事、そして、細胞膜外層脂質と内層脂質分布と脂質膜の物性の三者を同時に観察する事を目的とし、全反射顕微鏡の改造および観察試薬の検討を行い、蛍光3色観察系と蛍光スペクトルが膜物性により変化する試薬Di-4-ANEPPDHQ(以下、膜物性試薬)を用いた生体内膜物性解析系を立ち上げた。細胞膜が動的に変化する細胞伸展試験から得られた糸状仮足先端のコレステロールドメインの特異的分布について、現在までにHeLa細胞伸展における脂質分布と脂質膜物性の時系列変化を調べ、次の結果を得ている。 1、コレステロールドメインは進展初期に先端に局在しているが、次第に糸状仮足全体に分布が広がった。2、膜物性試薬の蛍光強度を元に糸状仮足先端コレステロールドメインの膜物性を求めた結果、コレステロールドメインプローブで染色された先端は他の部位より流動性に乏しく固い秩序液体相であった。3、糸状仮足先端の外層のコレステロールドメインの裏側、細胞膜内層ではホスファチジルイノシトール2リン酸(PLCdelta-PHドメインで可視化)とホスファチジルイノシトール3リン酸ドメイン(BTK-PHドメインで可視化)が存在した。 これらの結果から、糸状仮足先端における細胞膜外層のコレステロールドメインと内層のホスファチジルイノシトール脂質群の相関が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度前半で、細胞膜に特化した観察を行う事、そして、細胞膜外層脂質と内層脂質分布と膜物性の三者を同時に観察する事を目的とし、全反射顕微鏡の改造および観察試薬の開発を行い、反射顕微鏡における3色観察及び、生体内膜物性解析系を立ち上げた。実験を確固たるものにするために予定していた期間より長い約8ヶ月の期間を有したため、予定していた脂質プローブ観察は行ったが、定量解析については、現在進行中である。それ以外の実験についてはおおむね良好に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
顕微鏡観察の技術的な点については、ほぼ解決したため、まずは、糸状仮足形成における細胞膜内層脂質と外層ラフト脂質の分布との相関、それと膜物性について予定していた顕微鏡画像の定量的解析を速やかに行う。また、当初予定していた平成25年度の実験(以下)については、速やかに開始する。 1、薬理学的手法や遺伝学的手法により関連脂質の部分分解または細胞内生産量を変化させ、他の脂質の分布や膜物性に対する機能を明らかにする。薬学的手法の一つとしてChemical inducible dimerization法にて脂質量を変化させる実験を開始している。 2、糸状仮足についてその形成に関わる細胞骨格と膜物性の相関、さらには細胞骨格とラフト脂質との相関を明らかにする。当初は予定していなかったが、研究を進めていく段階で細胞接着関連分子との関わりを示唆する知見を得たため、そちらについても平行して試験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験については、当初予定していた研究計画がおおむね順調に進展しているため、平成25年度予定する実験を遂行するため物品費として予算を使用する。また、平成24年度は学会発表する段階には至っていなかったため、平成24年度予定していたものについては平成25年度内の国内学会発表を行うために使用する事を予定している。
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Research Products
(1 results)