2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞内タンパク質NDRG4のネットワーク動態の解明
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24770139
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
井本 ひとみ(山本ひとみ) 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 非常勤研究員 (50532230)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | NDRG4 / 神経細胞 / ナトリウム/カリウム-ATPase / 脳 / 心臓 |
Research Abstract |
本研究の目的は、NDRG4結合分子を同定し、脳や心臓におけるNDRG4の生理的役割とその細胞内ネットワークを明らかにすることである。応募者は、マウスにおけるNDRG4 mRNAの発現は、脳と心臓、眼に限局していることを既に明らかにしていたので、NDRG4結合タンパク質の同定法として、まず脳のcDNAライブラリーを使用した酵母ツーハイブリッド法を試みた。しかし、得た候補分子は、in vitro結合実験で結合しなかった。そこで次に、アフィニティ精製を行った。NDRG4が発現していないHeLa細胞にFLAG融合NDRG4タンパク質を発現させて、anti-FLAGアフィニティゲルに固相化した。野生型マウスの脳から調製した膜画分をアフィニティゲルに加え、溶出画分をSDS-PAGEで展開して、銀染色で検出した。特異的なバンドをトリプシン消化後、質量分析で解析して、Na+/K+-ATPase α3サブユニット(NKAα3)を同定した。 一方、NDRG4欠損マウスでは、心電図P波の延長がみられ、長期的な水泳ストレスで誘導されるべき心拍数の低下が抑制されていた。そこで、NDRG4欠損マウスにおける心拍数の調節異常は、脳からの出力異常に起因するものかを自律神経機能検査で調べた。心拍変動の周波数解析を行った結果、野生型とNDRG4欠損マウスで差が無かったことから、NDRG4欠損マウスにおける脳からの出力は正常と考えられた。 心臓におけるNDRG4 の局在をin situハイブリダイゼーションで検討したところ、NDRG4は心筋細胞に発現していた。NKAαも心筋細胞に発現することが知られているので、NDRG4がNKAαを介して心筋の機能を維持している可能性がある。NDRG4とNKAαの相互作用が正常な心拍動リズムやストレスに対する抵抗性の保持に必須であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、NDRG4の脳における結合分子としてNKAα3を同定した。NKAは、哺乳類において4つのαサブユニットと3つのβサブユニットが同定されており、主にテトラプロトマー(αβ)4として細胞膜上に普遍的に発現しているナトリウムポンプである。ATPの加水分解で得たエネルギーで、3個のNa+を細胞外へ、2個のK+を細胞内へと輸送してイオン濃度勾配を形成する。NKAは神経細胞の静止膜電位の維持やシナプス伝達に必須の分子であり、強心配糖体の受容体としてはたらく。NKAが、このような正常な生理機能を発揮するために、NDRG4は必須であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
心臓においても、NDRG4はNKAα3と結合するのかをアフィニティ精製を利用して調べる。マウスの脳や心臓組織を用いて、NDRG4とNKAα3との複合体形成や局在を共焦点レーザー顕微鏡観察で確認する。NDRG4とNKAα3の結合をBiacoreで解析し、濃度依存性や相互作用のカイネティクス、アフィニティを調べる。SILAC法を利用したプロテオミクス解析によって、NDRG4結合タンパク質とNDRG4に関わる細胞内ネットワークを包括的に明らかにする。野生型とNDRG4欠損マウスの脳および心臓のホモジネートからRNAを抽出し、変動する遺伝子をGeneChipで調べる。 NDRG4欠損マウスはストレスにうまく適応できないと予想されるため、運動や薬物負荷時における心電図の異常を調べる。また、心臓の虚血再灌流負荷試験にも取り組みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
SILAC (Stable Isotope Labeling using Amino Acids in Cell Culture)法では、2種類の細胞中の全タンパク質をそれぞれ質量の異なる安定同位体で標識することにより、発現量の変化したタンパク質の同定・定量を質量分析法で網羅的に解析できる。本年度は、NDRG4結合分子を探索する目的でSILAC法を行う予定であったが、アフィニティ精製のみで結合分子を同定することができた。次年度は、残額を利用して、更に詳細な解析へと進める。結合の確認は、アフィニティ精製やBiacoreで、またネットワーク動態はSILAC法で調べる。GeneChipや解析ソフトにも費用を費やす。また、国際血栓止血学会に演題登録済みであり、海外出張や論文投稿に費用が必要である。
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