2012 Fiscal Year Research-status Report
新規フォトクロミックATPアナログによるキネシンモーター機能の可逆的な光制御
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24770140
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
亀井 敬 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (90450650)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | フォトクロミック分子 / ATPアナログ |
Research Abstract |
研究当初の目的である、フォトクロミック分子・アゾベンゼン誘導体を組み込んだ新規なフォトクロミックATP(adenosine 5'-triphosphate)アナログ(ATP-Azos)を合成し、モータータンパク質・キネシンに対する運動特性への 可逆的な光制御を試みた。 新規なフォトクロミックATPアナログとして、ベンジル型のアゾベンゼンとそのパラ位にターシャルブチル基を導入したアゾベンゼン誘導体をリボースの2'位に結合させた、それぞれ、ATP-Azo, ATP-AzotBuの2種類の化合物を合成した。これらの化合物が水溶液中において、紫外光照射時にアゾベンゼン部位がシス体に異性化し、可視光照射時にトランス体に戻ることを分光器を用いて明らかにし、期待される光化学特性があることを確認してキネシンの運動特性の光制御を試みる実験を行った。 具体的には、上述したATP-AzoとATP-AzotBu2種類をインビトロモーティリティーアッセイに供し、紫外光照射したところ、キネシン上を滑走する微小管の速度が上昇し、また、可視光照射によって、おおよそ元の速度に戻ることを、ATP-AzotBuにおいて見出した。 また、興味深い現象として、このATP-AzotBuの高濃度(1mM)条件下では、紫外光照射時には微小管がキネシンと結合する、また、可視光照射時には解離するという現象も見出した。 本成果は、幾つかの学会や研究集会、また、学術雑誌1報に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初の目的である、フォトクロミック分子・アゾベンゼン誘導体をATPのリボースにおける2'位と3'位に組み込んだ新規なフォトクロミックATP(adenosine 5'-triphosphate)アナログのうち、2'位に組み込んだものについては合成に成功した。アゾベンゼン部位にターシャルブチル基をもつATPアナログについては、その存在下でインビトロモーティリティーアッセイにおいてキネシンー微小管系の運動特性を光変調させることに成功した。 まだ、光変調効果が小さいことや3'位にアゾベンゼン誘導体を組み込んだATPアナログの合成には成功していないものの、当初の目的の一部は成功しているので進行状況はおおむね順調だと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、ATP-Azosを用いてキネシンー微小管系の運動の光制御について研究を続行する。現在、ATP-Azoを用いたキネシンの運動の光制御効果は完全にスイッチオンーオフするようなクリアーなものではないので、それができるような条件をつめていく。具体的には、アデノシンのリボースにアゾベンゼンを導入するベンジルブロマイドの位置や置換基を変化させることを考えている。 また、ATPのリボースの3'位に特異的にアゾベンゼン誘導体を導入する合成スキームを確立することと、キネシンー微小管系の運動特性をATPase活性の測定等、生化学実験も行うことを予定している。 時間的な余裕があれば、他のモータータンパク質への適用などについても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度未使用額165,043円については、平成25年度に実施する研究計画において使用する試薬や少額備品の購入に費用に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)