2012 Fiscal Year Research-status Report
アクチン自己組織化によるアクチン細胞骨格の極性化機構の解明
Project/Area Number |
24770146
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木内 泰 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (70443984)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | アクチン |
Research Abstract |
細胞が前後軸を形成する時に前方でアクチン重合が盛んに起こり、アクチン細胞骨格は極性化する。この時、単量体アクチンやアクチン線維結合蛋白質はアクチン線維と結合するために細胞の前後軸で濃度勾配が形成され、極性化が促進されると予想されるが確かめられていない。このような濃度勾配を測定するため、以前我々が開発した単量体アクチン濃度の時間変動を測定する顕微鏡法(s-FDAP法)を改良し、数%の濃度変動の検出を可能にした(s-FDAPplus法)。この改良した顕微鏡法を用いて生細胞に物理刺激を加えた時の単量体アクチン濃度の経時変化を測定した。その結果、刺激後数秒で単量体アクチン濃度が約10%上昇することを見出した。以前、渡邊直樹教授(東北大)によって物理刺激によってアクチン重合因子であるmDia1が活性化し、その活性化メカニズムとして単量体アクチン濃度の上昇が示唆された。本研究で得られた結果は、このmDia1の活性化メカニズムを支持するものである。また以前我々は、アクチン脱重合因子コフィリンの不活性化によって単量体アクチン濃度が減少することも報告している。このように細胞内では、単量体アクチン濃度の変化とアクチン重合因子、脱重合因子の活性は連動しており、これらの因子の時空間的な関係がアクチン線維の自己組織化を引き起こし、極性化が促進されると考えられる。本研究の結果によってこの自己組織化過程の一端が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アクチン自己組織化によるアクチン細胞骨格の極性化を研究するためには、細胞質での分子の濃度変動の測定が必要である。しかし細胞質での分子の拡散速度は非常に早く、その濃度変動は局所的かつ一過的と予想される。そこで単量体アクチン濃度の時間変動を測定する顕微鏡法(s-FDAP法)を改良し、直径6.8μmの領域で、数%の濃度変動を検出する数秒刻みのタイプラプスイメージングを可能にした。そしてこの方法でアクチン重合因子の活性化メカニズムにおける単量体アクチンの寄与を明らかにした。このs-FDAPplus法は、蛍光タンパク質であるDronpaを融合させたアクチンを発現させて行う。このためこのs-FDAPplus法は、アクチン重合因子や脱重合因子にもDronpaを融合させれば、それぞれの因子の濃度変動の測定が可能となる応用性の広い顕微鏡法である。この顕微鏡法ならば、アクチン自己組織化過程の解析が可能となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
単量体アクチンはProfilinやThymosin beta4によって重合可能、不可能が制御されており、それぞれの結合量の変動は直接アクチン重合に影響を及ぼす。これらの結合量の時空間的変動をs-FDAPplusとその結果に基づくモデル解析で調べる。さらにアクチン重合因子であるArp2/3やmDia1とアクチン脱重合因子であるCofilinの蛍光タイムラプスイメージングと蛍光単分子可視化による定量解析を行うことで、アクチン自己組織化過程を細胞質とアクチン線維上の両側から解析する。それらの結果を市川一寿教授(東大・医科学研究所)が開発したシミュレーションプログラムA-Cellでモデル化し、アクチン細胞骨格が極性化メカニズムを解明する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)