2012 Fiscal Year Research-status Report
高速原子間力顕微鏡による脚の短いプロセッシブミオシンの運動メカニズムの解明
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24770149
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古寺 哲幸 金沢大学, バイオAFM研究センター, 准教授 (30584635)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 1分子計測・操作 / モータータンパク質 / 原子間力顕微鏡 / ミオシン / アクチン |
Research Abstract |
ミオシン6とミオシン10は、細胞内で小胞輸送や、特定の構造を保持するためのアンカーとして機能しているモータータンパク質である。各ミオシンの脚(レバーアーム部)の長さは、細胞内で同じく小胞輸送を担うミオシン5のものと比べて、ミオシン10の場合は半分、ミオシン6にいたっては3分の1しかない。近年、これらの脚の短いミオシンでも、アクチンフィラメント上を大きな歩幅でプロセッシブ運動できることが報告され、注目を集めているが、それらの構造的証拠はほとんど得られていない。そこで、本研究では高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて、運動中のミオシン6とミオシン10の構造形態変化を直接観察することで、その構造的証拠を提出し、それぞれのミオシンの機能メカニズムを詳細に解明することに取り組んでいる。当該年度は、運動中のミオシン10の構造形態変化を詳細に観察することに主に取り組んだ。その結果、昨年までにミオシン6の運動観察で観察されたような(1)2つのモーター部を大きく広げた構造形態をとることで大きな歩幅で前進運動すること、(2)2つのモーター部が隣り合うアクチンのサブユニット上に寄り添うような形で結合する様子が直接的に観察された。以上の観察結果は、ミオシン10の運動様式を直接観察した画期的な成果である。また、AFMの画像撮影中に狙った場所にだけに力を及ぼすことができる走査モード(インタラクティブモード)を開発した。その性能を評価するために、ATP非存在下のミオシン5の後ろ足にだけ力を及ぼすことを試み、ミオシン5に人工的な一方向運動を誘起することに成功した。この結果は、ミオシン5の前進運動にATPの加水分解サイクル中の中間状態ADP.Pi状態は必要ないという極めて重要なことを示唆している。このモードは、ミオシン6やミオシン10の運動メカニズムを解明するに当たっても非常に有効である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題を実施することができたために、ミオシン6とミオシン10がアクチンフィラメント上を大きな歩幅で歩行運動するための構造基盤をリアルタイムに撮影できたことは特筆に値する。また、2つのミオシンがアクチンフィラメントに2つの頭部で結合しているときの前足にわずかながら回転運動が見られることに気が付いている。この回転運動はレバーアーム部位が硬いと考えられるミオシン5のときは見られないので、レバーアーム部位のフレキシビリティーが、この運動の有無を決めているということが示唆される。このような観察結果は、従来の手法では取得することができないために、これらのミオシンの運動メカニズムを別の視点からより詳細に理解することに繋がると考える。 しかしながら、これらのミオシンの構造(レバーアーム部位)は、これまでに観察に成功しているミオシン5のものと比べて小さいために、詳細に観察することが難しいという問題がある。また、運動がミオシン5のものと比べてレギュラーではないため(前進運動だけでなく後進運動もしばしば行う)、統計解析をするに当たりミオシン5のとき以上に観察例が必要である。現在、高分解能観察や統計解析に十分な観察例を集めている段階であるが、AFM探針の劣化が著しいため、当初計画していた程に観察例が集まらないという状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、運動中のミオシン6とミオシン10の詳細な構造形態変化を撮影した観察例を統計解析に持ち込めるほど収集することが第一の課題である。しかしながら、現在のAFM探針は劣化が著しく、さらに、ミオシン6とミオシン10の構造(レバーアーム部位)は、これまでに観察に成功しているミオシン5のものと比べて小さいために、それらの構造を高い空間分解能で観察することができないという問題がある。この解決には、先鋭・高寿命のAFM探針の開発が課題である。そこで、新規AFM探針材料を探索することで、この課題に取り組む。電子顕微鏡内に昇華物質を入れてEBD(Electron Beam Deposition)法で探針を作ると、物質に依存した探針が得られることが知られている。この課題は非常に地味ではあるが、今後の実験効率を劇的に改良することが見込まれるので、時間をかけて取り組む。 ミオシン10に関しては細胞内ではフィロポーディア付近の束化したアクチンフィラメント上で機能していることが知られている。よって、ミオシン10に関しては、束化したアクチンフィラメント上での運動に関しても観察を行う。 当該年度に成功しているインタラクティブモードを用いた、ATP非存在下でのミオシン5の前進運動の観察結果は、当該分野に非常に大きなインパクトを与えるはずであるので、この研究課題も併せて推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高速AFM観察を行うためには、消耗品として高速微小カンチレバーが必須であるので、その購入に研究費を充てる。昨年度に引き続き、生化学試薬を購入し、本研究を実施するにあたり必須なアクチンフィラメントとミオシンの試料調整と、AFM観察に用いる基板調整を行う。また、新規AFM探針材料を模索するために、有効と思われる化学試薬を購入する。その他、顕微鏡装置の改良は、研究を効率化するために引き続き実施していくことが重要である。そのため、必要に応じて、機械部品や電子部品を製作するために研究費を使用する。また、これまでに得られている観察結果を専門家の前で発表し、意見交換を行うことは、本研究の成果を論文発表の形に持っていくための前段階として、非常に重要と考えるので、国内外の学会に参加するための旅費を計上する。
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[Book] Atomic Force Microscopy in Liquid2012
Author(s)
Ando, T., Uchihashi, T., Kodera, N., Shibata, M., Yamamoto, D., and Yamashita, H.
Total Pages
402
Publisher
Wiley-VCH
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