2013 Fiscal Year Research-status Report
高速原子間力顕微鏡による脚の短いプロセッシブミオシンの運動メカニズムの解明
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24770149
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古寺 哲幸 金沢大学, バイオAFM先端研究センター, 准教授 (30584635)
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Keywords | 一分子計測・操作 / モータータンパク質 / 原子間力顕微鏡 / ミオシン / アクチン / 生物物理学 |
Research Abstract |
ミオシン6とミオシン10は、細胞内で小胞輸送や、特定の構造を保持するためのアンカーとして機能しているモータータンパク質である。これら2つのミオシンは脚が短いにも関わらず、アクチンフィラメント上を大きな歩幅でプロセッシブ運動できることが報告されている。しかしながら、それらがアクチンフィラメントと相互作用しているときの明瞭な構造的証拠はいままで得られていない。そこで、本研究では高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて、運動中のミオシン6とミオシン10の構造形態変化を直接観察することで、その構造的証拠を提出し、それぞれのミオシンの機能メカニズムを詳細に解明することに取り組んでいる。 当該年度は、前年度までに観察に成功している各ミオシンの歩行運動の高空間分解能観察と観察例を増やすことに取り組んだ。特に、ミオシン10においては、得られた観察像の詳細解析に取り組み、運動様式の詳細を次のように明らかにすることができた。(1)大きな歩幅は、ミオシンの軽鎖結合部位よりも高さが低いドメインによって実現されていること。その高さが低いドメインは、これまで報告されているSAH(single alpha helixの略)ドメインと矛盾しない形状で、歩行運動中のミオシン10において直接的な構造証拠を提出できたことを意味する。(2)低濃度ATP存在下で、ミオシン10はミオシン5よりも頻繁に前足が解離し、イレギュラーな運動を起こしやすいことが分かった。これは、ミオシン10の2つの足が柔らかいSAHドメインでつなげられているために、分子内張力による2つの足のキネティクスの非対称性の度合いを低くしているためだと考察された。 また、ミオシン10においては、ファシンでバンドル化したアクチンフィラメント上(生体内で機能している環境に近い)を運動する様子も観察することにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高速原子間力顕微鏡を用いて、ミオシン6とミオシン10の歩行観察を直接観察することによって、それぞれのミオシンが大股を広げて歩行している様子の構造的証拠を得ることができており、徐々にその運動様式の詳細に迫るデータを得ることができている。しかしながら、それぞれのミオシンは、これまでに観察に成功しているミオシン5の運動と比べてレギュラーな運動を行わないことが分かってきた。それゆえ、その運動様式を定量するためにはたくさんの観察例を集めなければならないが、先鋭で安定なAFM探針を作成する歩留りが悪く、さらに先鋭なAFM探針を作成できても摩耗が激しいために、当初計画していたほどに高い空間分解能の観察例が集まらないという状況である。これには、本課題研究で観察しているミオシン6と10は、ミオシン5にくらべ足が短いということも強く影響している。ミオシン6の歩行運動様式に関しては、大股を広げるときの構造モデルとして、現在2つのモデルが提案され、論争中であるが、それを決定的にする映像は得られていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が本研究課題の実施の最終年度であるので、ミオシン10に関しては、統計解析を行える程度に観察例が集められているので、それらをまとめ、運動様式を議論した論文を執筆する。また、ミオシン6に関しては、論争中の二つのモデルのどちらの場合も観察されており、どちらのモデルも正しい場合も考えられるが、空間分解能が十分でないために、そのように観察されていることも考えられる。先鋭で安定なAFM探針の作成法を模索しながら、高い空間分解能でミオシン6の歩行運動を観察し、その運動様式を明らかにする。ミオシン6もミオシン10と同様に、運動様式を統計解析し、その機能メカニズムを明らかにする。ミオシン6に関しても、次年度の終わりまでに論文を投稿できるところまでもっていく。
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