2012 Fiscal Year Research-status Report
無細胞翻訳系を用いた生化学反応への反応場サイズの寄与の解明
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24770153
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡野 太治 大阪大学, 情報科学研究科, 特別科学研究員 (60622082)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マイクロチャンバー / 無細胞翻訳系 / タンパク質合成 / 一分子計測 / 緑色蛍光タンパク質(GFP) / βガラクトシダーゼ |
Research Abstract |
本研究は、微小反応場に細胞の内部環境を再現し、反応場サイズと内部で起こる生化学反応の関係性を実験的に明らかにすることを目的としている。これを推進するため、今年度は、新奇な設計コンセプトに基づいたガラス製マイクロチャンバーを作製し、微小反応場として用いた。ここに再構成無細胞翻訳系を封入し、DNA一分子からのタンパク質合成を観察することに成功した。 マイクロチャンバーの多くは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で作製されている。しかし、PDMSが疎水性・多孔質材料であるために、無細胞翻訳系を用いたタンパク質合成はほとんど進行しないことが予備実験より明らかになっていた。そこで、親水性・無孔質材料であるガラスでマイクロチャンバーを作製した。このチャンバーは、顕微鏡観察の要請からカバーガラスで密封する必要がある。しかし、ガラス同士の接着は容易ではない。そこで接着層として、PDMS薄膜をチャンバー基板表面に形成した。これにより、PDMSによる反応阻害を最小限に抑えつつ、チャンバー区画の密封・顕微鏡観察が可能なガラス製マイクロチャンバーを得た。 このマイクロチャンバーの微小反応場としての性能を評価するため、40fLから7pLのチャンバー内で無細胞翻訳系を用いて緑色蛍光タンパク質(GFP)の合成を行った。その結果、GFP合成量がPDMS製マイクロチャンバーと比べて約12倍向上した。この実験のチャンバー間誤差は非常に小さく、その変動係数は5.5%であった。 更に、体積40fLのチャンバーで、DNA一分子からのタンパク質合成の検出を試みた。レポータータンパク質として広く利用されているGFP、βガラクトシダーゼの合成を行ったところ、DNAの封入数に応じて量子化された、離散的な反応産物のシグナルを検出することに成功した。 以上の成果は、論文、学会発表を通して公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の当初計画は、(1) ガラス製マイクロチャンバーの作製、(2) チャンバー内でのタンパク質合成反応の観察/問題点の検証、の二つから成る。これらはいずれも今年度内に実施され、計画通りの進展がみられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、当初計画通りに研究を実施した。今後の研究を推進するにあたって、研究目的の達成に障害になるような問題点・課題はなく、今後の研究も当初計画通りに実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究推進にあたり必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額が異なったが、今後の研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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Research Products
(4 results)