2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24770154
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 浩史 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 助教 (20512627)
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Keywords | 概日リズム / 温度補償性 / シアノバクテリア / KaiC |
Research Abstract |
24時間周期の生命現象である概日リズムは、自律振動子であること、温度補償性を持つこと、外部からの周期的な外力に同調することが知られている。本研究プロジェクトにおいては、ほとんど分子メカニズムが未解明であった周期の温度補償性に関して、非線形動力学の分岐理論の知識を用いてアプローチすることを試みた。 分岐理論によれば、リミットサイクル振動子(自律的なリズム)がパラメータの変化によって、リズムが失われるときは大きく分けて二つのメカニズムが存在する。一つはHopf分岐と呼ばれ、振幅の低下によってリズムが失われる。二つ目は、Saddle-node分岐と呼ばれ、遅いプロセスが出現しリズムの周期が無限大となることによって、リズムが失われる。 本研究提案では、低温下で概日リズムが見られなく現象に着目し、分岐の種類を調べた。その結果シアノバクテリア概日リズムの中心振動体とみなされているKaiCリン酸化リズムにおいては、温度の低下と共に振幅の減少が観察されHopf分岐を介してリズムが失われていることが示唆された。Hopf分岐の理論によれば、自律振動子の振幅が0になる分岐点以後は、減衰振動子に変化すると予言される。この現象も観察された。 他の生物の概日リズムは低温下において、どのような分岐でリズムが失われるかを検討したところ、哺乳類培養細胞・シロイヌナズナ・ショウジョウバエ概日リズムにおいても同様に、低温下で振幅の現象が見られ、周期はそれほど変化しなかった。これらの結果は、Hopf分岐点の近傍に多くの生物の概日リズムは存在していることが示唆される。Hopf分岐点近傍では周期が比較的変化せず、振幅が変化することが知られているため、温度補償性のメカニズムと関係していることが推察される。
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Research Products
(5 results)