2012 Fiscal Year Research-status Report
リジン脱メチル化酵素KDM7Aによるp53活性化機構の解明
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24770165
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
米沢 理人 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (10579155)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 分子生物学 / 細胞生物学 / 生化学 / リジンメチル化修 / アセチル化修飾 / リジン脱メチル化酵素 / 癌 / アポトーシス |
Research Abstract |
ヒト乳癌由来MCF-7細胞株をエトポシド処理した際のKDM7Aの局在を免疫蛍光染色法により調べ、KDM7Aの集積する核内スポットがエトポシド処理時に若干PMLボディと重なる割合が増えるが、定常状態でもKDM7AがPMLボディに蓄積していることが分かった。KDM7Aに対するモノクロナル抗体を作製し、免疫沈降により複合体解析を行ったところ、エトポシド処理に応答したp53タンパク質の蓄積に伴いKDM7Aがp53、p300と複合体を形成すること、SET9とは複合体を形成しない(感度のよいSET9抗体でもco-IPされたSET9が検出されない)こと、KDM7A複合体中のp53はK382アセチル化が亢進していることを見出した。KDM7A複合体中のp53K372メチル化、p53K382メチル化、PML、CBPに関しては抗体の質が良好ではなく、結論に至っていない。質量分析法でもp53修飾解析を試みたが、今のところ検出系の精度が不十分で解析できていない。 MCF-7及びヒト骨肉種由来U2OS細胞でKDM7Aのノックダウンを行ない、エトポシド処理後のp53修飾の変化を解析した。コントロールとして用いたp53はsiRNA、shRNAどちらを用いた場合でもRT-qPCRにより定量したところいずれの細胞株においても10%程度にまでノックダウンでき、KDM7AはsiRNA 7種類、shRNA 16種類を試し、最も効率のよい2種類のshRNAで35%程度にまで低下した。この条件下でエトポシド処理後のp53及びp53K382アセチル化の蓄積をウェスタンブロットにより解析したところ、p53の蓄積に有意な差は見られなかったが、KDM7Aのノックダウンによりアセチル化レベルが50-60%に低下することが観察され、KDM7Aがp53アセチル化経路において正に働くことが培養細胞レベルでも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように複合体解析においての未解決部分がある一方、2年目に計画しているKDM7Aとp53の下流遺伝子の解析に関してpreliminaryなデータを得ており、多くの共通する下流遺伝子が分かってきている等、予定より進んでいる部分もあり、概ね予定通りの達成度である。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞レベルを中心としたKDM7Aの機能解析を進める。複合体解析はウェスタンブロット等の条件検討を行ない、上述した未解決部分の解決を目指す。KDM7Aを過剰発現もしくはノックダウンし、細胞周期停止、細胞老化、DNA修復、アポトーシスにおける役割を解析する。これらは、DNA染色、アネクシンV染色、TUNEL法Senescence-associated beta-galactosidase assay、その他マーカーによる免疫染色により調べる。更に、KDM7AノックダウンとDNA傷害を組み合わせた時の遺伝子発現(特にp53ターゲット遺伝子)の変化、これらの遺伝子プロモーターへのKDM7A、p53のリクルートメント、ヒストン修飾(H3K4、H3K9、H3K27メチル化)の変化を定量的PCR(qPCR)、DNAマイクロアレイ、クロマチン免疫沈降法(ChIP-PCR、ChIP-seq)により広範囲に調べる。また、p53をノックダウンしたときにKDM7Aを過剰発現させることにより、KDM7Aによるアポトーシス誘導等の効果がp53依存的か検討する。PHDフィンガー、JmjCドメイン変異コンストラクトを用い、これらのドメインの必要性も検討する。また、KDM7Aをノックダウンした細胞株をヌードマウスに皮下移植し、腫瘍形成効率をコントロール細胞株と比較することにより、KDM7Aが生体内環境においても腫瘍形成に重要であるか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画を遂行する上で必要となる高額な備品は所属機関に揃っているので、設備備品費は計上しない。消耗品(細胞培養関連製品、分子生物学試薬、抗体や質量分析関連の生化学試薬、ヌードマウスを用いた皮下移植実験費用等)に約110万円を充てる。情報収集、研究成果発表のための国内学会(2回)に15万円、国際学会(1回)に30万円を、研究成果投稿料に25万円を計上する。いずれの費目も全体の研究経費の90%を超えない。
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Research Products
(2 results)