2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24770167
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永森 一平 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20624729)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / PIWI / MILI / MIWI2 / piRNA / レトロトランスポゾン / 核膜 |
Research Abstract |
ゲノムDNAの40%前後を占めるレトロトランスポゾンの発現抑制は全ての生物種において必須である。この過程において、重要な役割を果たす遺伝子として、piwi遺伝子群が種を超えて同定されている。 マウス胎生期雄性生殖細胞において、MILI(Mouse PIWI like)は細胞質、MIWI2(Mouse PIWI2)は核内に局在しており、MIWI2が、レトロトランスポゾン領域のDNAメチル化を介した発現抑制を誘導していると考えられている。このとき、MIWI2の部位特異性の規定には、その結合低分子RNAであるpiRNA(PIWI-interacting RNA)が担っていると考えられている。そのため本申請では、核内においてMIWI2とpiRNAがどのようにレトロトランスポゾン領域特異的に DNAのメチル化を誘導しているか、を明らかにすること、を目的の一つとしていた。しかしながらこれまでの知見に反して、MIWI2のみならずMILIも核内に局在していることを見出した。興味深いことに、MILI、MIWI2ともに核膜を含む核マトリクス画分に局在していた。核膜への局在はその領域の発現抑制と強い相関関係が報告されている。そのため、今回の発見は、MILI、MIWI2によるレトロトランスポゾンのサイレンシングと核膜を繋ぐ、初めての知見である。更にこのMILI、MIWI2の核マトリクスへの局在は、Nascent RNAを含む複合体を介していることを示唆する結果を得た。最後にMILIの核内移行はMiwi2欠損マウスにおいても影響はないことを確認した。これまでの報告から、Mili欠損マウスで観察される表現型はMiwi2欠損マウスで観察されるそれより、強いことが知られている。前年度に明らかにしたMILIの核内移行はこの不一致を説明し得る、大きなインパクトを持つ研究に展開すると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請では、1)胎生期雄性生殖細胞におけるDNAメチル化の分子機構の解析、及び2)培養系におけるDNAメチル化誘導機構の確立と解析、の二つの実験を提案した。まず、前者において、内在的に行われている部位特異的なDNAのメチル化誘導の分子機構を明らかにし、これによって得られた知見を後者の培養系におけるDNAメチル化誘導機構の確立に応用することを目標としている。前年度における研究から、MIWI2のみが核内に局在できる、という通説を覆し、核内へのMILIの移行を見出すことに成功した。また、これまで報告されていないERVB7レトロトランスポゾンのLTR断片がpiRNA依存的なDNAメチル化を受けることも見出した。興味深いことに、転写されている領域に挿入されたERVB7 LTR断片は80-90%前後のCpGがメチル化されるが、転写されていない領域に挿入された断片は10-20%しかメチル化されていなかった。すなわちマウスpiRNA依存的なDNAメチル化を受けるためには、その領域が転写されている必要がある、ということを確認でき、これは、MILI、MIWI2がnascent RNA依存的な的な核マトリクスへの移行とも一致する。 この様に、現時点において、当初の予定を上回る結果を得ることが出来ていると言える。更に、“培養系におけるDNAメチル化誘導機構の確立と解析”を行うにあたり用いる予定のEF1プロモーターによってGFPを発現する細胞株の樹立が完了している。このEF1プロモーター領域に対するsmall RNA、及び同じ配列を持ち、より安定な核酸アナログであるLNA(Locked Nucleic Acid)の設計も完了しており、この実験に関しても準備は整っているため、達成度は極めて高いと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、1)胎生期雄性生殖細胞におけるDNAメチル化の分子機構の解析、及び2)培養系におけるDNAメチル化誘導機構の確立と解析、を行う。まず、前者に関しては、核内におけるMILI、MIWI2がレトロトランスポゾン領域に実際に結合しているか、をChIP(Chromatin immune precipitation)で観察する。近年の報告から、de novo DNAメチル化酵素であるDnmt3a(DNA methyltransferase 3a)がHistone H4 Arg3me2(H4R3me2)を認識し、クロマチンの特定部位にリクルートされること、又H4R3me2を誘導するPrmt5(Protein methyltransferase 5)がMILI、MIWI2と結合することが報告された。そこで、piRNAを介してレトロトランスポゾン領域に結合したMILI、MIWI2がPrmt5をリクルートし、近傍のH4R3をメチル化する。続いて、このH4R3me2によって、Dnmt3aがレトロトランスポゾン領域にリクルートされ、de novo DNAのメチル化が行われる、という作業仮説を持つに至った。前者の課題において、今年度はこの作業仮説を検証する。 後者の実験において、これまでに準備してきた細胞株にsmall RNA、LNAを一過的に導入し、GFPの蛍光強度の変化を観察する。GFPの蛍光強度に変化があれば、上記の作業仮説同様に、GFPの上流にあるEF1プロモーター中におけるDNAのメチル化、及びH4R3me2の状態を観察する。上記の二つのプロジェクトを同時に展開することによって、de novo DNAのメチル化を誘導する分子機構を明らかにすることが出来ると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度における進捗状況は予想を超えるものであった。この研究を更に展開するためには上述の通り、複数種の抗体を用いて、野生型のみならず、Mili、Miwi2欠損マウス由来の精巣からChIPを行う必要がある。通常、ChIPに必要とされる抗体量は他の抗体を用いた実験よりも多いため、抗体の購入費が必要となる。又、ChIP後のサンプルにおいて、qPCRでレトロトランスポゾン領域との結合を確認するが、qPCRの試薬も高価であるため、この購入費も必要である。 本申請では少なくとも二種類の遺伝子改変マウス(Mili、Miwi2欠損マウス)を用いる予定である。さらに、胎生期の精巣を実験サンプルとして必要としており、通常よりも多くのマウス数を必要であるため、これらのマウスの維持費にも用いる。 細胞培養関連の試薬(培地、血清、遺伝子導入試薬)などは高価であり、且つ大量に使用することが、予想されるため、これらの試薬費用としても計上する。 本年度においては、国内外の学会、シンポジウムにおいて発表を予定しており、その出張費にも計上する。
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