2013 Fiscal Year Research-status Report
精製タンパク質を用いた染色体の再構成:凝縮メカニズムの包括的理解を目指して
Project/Area Number |
24770172
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
新冨 圭史 独立行政法人理化学研究所, 平野染色体ダイナミクス研究室, 研究員 (60462694)
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Keywords | 染色体 / ヒストン / コンデンシン / トポII / 再構成 / リン酸化 |
Research Abstract |
分裂期における染色体構築は遺伝情報を正確に娘細胞に継承するために不可欠である。これまでに様々な実験手法を用いて研究が行われてきたが、いまだに「どのようにして一本のクロマチン繊維が染色体内に折り畳まれるのか。」あるいは「何種類のタンパク質が染色体構築に必要なのか。」といった本質的な疑問に答えることはできない。これらの積年の問題を解決するには、できるだけ少ない種類の精製因子を用いて試験管内に染色体を再構成できる方法の開発が有効であると考えられる。カエル卵抽出液中では、精子DNAをインキュベートすれば染色体を再構成できることが知られている。まず、卵抽出液の代わりに主要な染色体構成タンパク質であるコアヒストン、コンデンシンI、トポイソメラーゼIIの精製標品だけを用いて染色体を作ることができるかを調べたが、この試みはうまくいかなかった。しかし、興味深いことに、卵抽出液をポリエチレングリコール(PEG)で分画した際の4.5% PEG沈殿物(フラクションA)を上記の精製タンパク質混合液に加えるだけで、染色体を再構成できるようになった。これらの結果は、フラクションAの中に染色体構築に必須の未同定因子Xが存在することを示すものと言える。さらに、カラムクロマトグラフィーによって因子Xの候補を絞り込んだところ、因子Xはキナーゼではないことが判明した。すなわち、分裂期卵抽出液から精製した「予めリン酸化された」タンパク質を用いれば、染色体再構成には新たなリン酸化が必要ではないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的で最も重要なものは、染色体を再構成するのに何種類のタンパク質が必要なのかを決定するということであった。これまでの研究によってこの疑問に対して概ねの解答が得られたことが大きな成果といえる。すなわち、コアヒストン、トポII、コンデンシンIさらに、因子Xがあれば染色体凝縮に必要かつ十分な因子であることが強く示唆された。また、タンパク質に様々な精緻な実験操作を施すことができるという再構成系の最大の強みを活かす方法論も整いつつある。特筆すべきことに、染色体凝縮には、どの基質が、どのキナーゼでリン酸化されることが必要十分なのかという、従来の解析法では十分に検討できなかった疑問の解明につながる有力な証拠を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、因子Xを同定し、再構成系を完成させることに注力する。その後取り組むべき課題として、タンパク質リン酸化やコアヒストンが染色体凝縮に果たす役割の解明が挙げられる。さらに長期的目標として、クロマチンの染色体内での折り畳まれ方を理解するために、再構成染色体の構造解析法を検討することが重要となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度中に染色体再構成系を確立することを目指したが、そのためには当初想定してないかったタンパク質因子Xが必要であることを示唆する結果を得た。計画を変更し、因子Xの染色体構築への関与を検討するために未使用額が生じた。 2014年度には、因子X について解析を行うこととし、未使用額はその経費(特に特異抗体作製にかかわる費用)に充当する。
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