2012 Fiscal Year Research-status Report
分裂酵母の収縮環におけるアクトミオシン相互作用の解析
Project/Area Number |
24770177
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高稲 正勝 筑波大学, 生命環境系, 特任助教 (20573215)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 細胞質分裂 / 収縮環 / アクチン細胞骨格 / 分裂酵母 / II型ミオシン / IQGAP |
Research Abstract |
細胞質分裂に必須な収縮環は、筋肉と同様にアクチン繊維(F-actin)とII型ミオシンから構成されることが明らかになっているが、形成や収縮における分子機構の詳細は不明のままである。申請者は今までに分裂酵母IQGAP Rng2が、収縮環F-actinを配向させ、収縮環におけるミオシンの安定な局在に関与することを解明した。本研究ではRng2が形成するF-actin束とミオシンの相互作用を精細に観察することで、収縮環アクトミオシン相互作用様式の解明に迫る。平成24年度に主に実施した研究の成果について、以下に述べる: (1) Rng2存在下におけるアクトミオシン相互作用の生化学的解析 Rng2のアクチン結合部位(以下、Rng2CHD)存在下でミオシンのin vitro motility assayを行った所、アクチン繊維の移動速度が低下した。またRng2CHDはミオシンのアクチン活性化ATPase活性を低下させた。さらに共沈実験より、Rng2CHDはアクチンとミオシンの結合を妨げないことが明らかになった。 (2) ミオシンの局在性に対するRng2の機能解析 分裂酵母内でRng2のアクチン結合部位を過剰発現した所、細胞内に異常なアクチン束が形成され、同じ場所にミオシンも集積した。他のアクチン結合タンパク質の過剰発現ではそのようなミオシンの集積は観察されなかった。また生細胞においてRng2とミオシンを同時に観察したところ、分裂期において二者はほぼ同時に、同様な収縮環構造を形成し始めることが明らかになった。 以上の結果はRng2がアクチン繊維を修飾することで、アクトミオシン相互作用を調節して、ミオシンの細胞内局在を制御していることを示唆している。これらの成果は論文としてまとめ、現在投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究課題の目的は分裂酵母IQGAP Rng2がアクトミオシン相互作用に及ぼす効果を解明し、それを収縮環の形成や収縮といった生理機能と結びつけることに他ならない。現在までに研究代表者はRng2のアクチン結合ドメインがミオシンのアクチン活性化ATPaseサイクルを減速させる作用を持つことを生化学的に明らかにした。また生体内で実際にRng2が前述のアクトミオシン調節作用を介して、ミオシンの局在を制御していることを示唆する結果も得られている。従って収縮環形成に密接に関連する、収縮環アクチン繊維特異的にミオシンを局在させる機構についてはほぼ解明できたと考えられる。 今後は主に収縮環の収縮機構を明らかにするために、マクロな視点から、Rng2とアクチン繊維の集合体に対してミオシンがATP加水分解のエネルギーを介してどのような作用(変形、脱会合等)を及ぼすか観察する実験を行う。これらの実験には今までの研究で構築してきた生化学の実験系や、生細胞観察系が流用できるので、研究がよりスムーズに進行することが期待できる。また今後の実験に必要なミオシン変異株はほぼ作製が完了しつつある(研究実績の概要では省略)。よって現在までに得られた研究成果は本研究課題の研究目的に則して、概ね順調な達成度であると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題において、現在までに分裂酵母IQGAP Rng2がアクチン繊維に結合して、ミオシンのATPaseサイクルと共役したアクトミオシン相互作用を調節することで、ミオシンの収縮環における局在を制御することを示した。従って、収縮環形成を考える上で最も重要な、収縮環アクチン繊維特異的にミオシンを局在させる機構についてはほぼ解明できたと考えられる。今後は収縮環の収縮機構を明らかにするためにミオシンのATP加水分解のエネルギーがRng2とアクチン繊維の集合体(収縮環アクチン繊維)にどのような作用を及ぼすかを観察する実験を行い、研究課題の完遂を目指す。 当初はATPase活性変異型ミオシンについて、生化学的解析と生細胞における観察を同時並行で網羅的に進める予定であった。しかし、分裂酵母からのミオシンタンパク質の精製が予想以上に困難であることが判明し、一方でミオシン変異株の系統的作製は効率的に行うことが可能であった。また研究計画段階での予想通り、変異によりATPase活性を変化させるとミオシンの局在性や機能が変動するという予備実験の結果も得られている。従って今後はミオシン変異株の生細胞における解析を優先的に進めてATPase活性と収縮環の収縮速度、および収縮環アクチン繊維の動態との関係を検証する。 生化学実験系については、細胞性粘菌や昆虫細胞による発現・精製系の導入によりミオシン精製効率の改良を試みる。ミオシン精製が可能になったならば、変異株の解析から導出された仮説の裏付けを取るような実験を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は卓上防振台(シグマ光機社製)を購入する予定であったが、同等品を無償で譲り受けることができたため、その分の研究費を次年度分に繰り越した。また全反射蛍光顕微鏡システムを自作することにしたため、当初購入予定であった全反射蛍光顕微鏡用投光管(オリンパス社製)が不要になった。その分の研究費を上述の繰り越し分と合わせて、より精密な画像解析を可能にするデコンボリューション解析用ソフトウェア(SVI社製)の購入に充てる予定である。
|