2012 Fiscal Year Research-status Report
血球系細胞分化における核小体の役割とその分子機構の解明
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24770178
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
黒田 貴雄 同志社大学, 高等研究教育機構, 助教 (30620637)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 核小体 / 血球系細胞分化 |
Research Abstract |
ヒト白血病細胞株K562細胞をPMA (Phorbol Myristate Acetate)で処理し巨核球に分化させると、リボソームRNA (rRNA)の転写が抑制されることが明らかとなった。また、分化誘導時における核小体内のRNA量を測定した結果、rRNA転写抑制に伴って、核小体内RNA量も減少していることが明らかとなった。これまでに我々は、核小体に局在するタンパク質の一つであるMYBBP1Aが、核小体内のRNA量依存的に核小体に局在していることを明らかにしている。このことから、K562細胞においてMYBBP1Aの局在を解析した結果、分化誘導前には核小体内に局在していたMYBBP1Aが、核小体内RNA量が減少する分化誘導後には、核小体から核質に局在を変化させていることが明らかとなった。MYBBP1Aは転写因子c-Mybと結合し、c-Mybの転写活性を抑制することが報告されている。分化誘導後において、MYBBP1Aとc-Mybとの結合を解析した結果、両者の結合が確認され、さらにc-Mybの転写活性を測定するレポーター解析から、MYBBP1Aがc-Mybの転写活性を抑制していることが明らかとなった。最後に、巨核球分化におけるMYBBP1Aの役割を明らかにするため、分化誘導時にMYBBP1Aのノックダウンを行った結果、c-Mybの転写抑制は部分的に解除され、巨核球への分化が抑制された。以上の結果から、血球系細胞において、細胞分化に伴うrRNA転写抑制は、MYBBP1Aによるc-Mybの転写活性制御を介して、分化促進に働くことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト白血病細胞株K562細胞を用いて、目的としていた、① 分化の過程でrRNA転写が抑制され、核小体内のRNA量が減ることでMYBBP1Aが核小体から核質に移行すること、② 核質に移行したMYBBP1Aはc-Mybに結合し、その転写活性を制御することで血球系細胞の分化に影響を与ることを証明することができた。以上の点に関しては計画以上の進行具合である。しかし、予定していたMYBBP1Aのコンディショナルノックアウトマウスの作製がまだ成功しておらず、この点に関しては計画より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、rRNA転写に必須の因子であるTIF-IAをノックダウンすることにより、DNA損傷等の細胞ストレスを与えることなく、rRNA転写のみを特異的に抑制することができる実験系を開発している(Kuroda T, et al., EMBO J., 2011)。この方法を用いることにより、rRNA転写抑制が巨核球分化に与える影響を純粋に解析することができる。そこで、TIF-IAノックダウンがMYBBP1A、c-Mybおよび巨核球分化に与える影響を解析する。 K562細胞は癌細胞であり、分化誘導剤として用いたPMAは人工的な化合物であるため、今回の条件で明らかにした分子機構が正常細胞で機能しているとは限らない。そのため、より生理的な条件での証明が必要である。そのため今後、正常なマウス生体から造血幹細胞を単離し、サイトカインを用いて巨核球分化を誘導した時における核小体の挙動とMYBBP1Aの機能を確かめる。また昨年度に引き続き、MYBBP1Aのコンディショナルノックアウトマウスの作製を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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