2012 Fiscal Year Research-status Report
脂溶性リガンド作用における核内受容体の標的特異的分解機構の解析
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24770181
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
岡田 麻衣子 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00572330)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | タンパク分解 / エストロゲン / 細胞周期 |
Research Abstract |
本研究課題においてはリガンド依存的なタンパク分解基質の同定及び機能解析を行った。エストロゲンは主要な女性ホルモンであり、子宮、乳腺、骨、脳と多様な組織を標的とする。中でも、子宮内膜や乳腺組織においてはエストロゲン濃度の上昇に応答して急速な細胞増殖を呈することが知られている。このようなエストロゲン作用はエストロゲン受容体を介して発揮されており、従来標的遺伝子発現制御を主たる分子機構として解析が進められていた。本研究ではこのような機構に加え、エストロゲンが標的特異的なタンパク分解を介して細胞増殖に寄与することを見出している。特に細胞周期に応じてタンパク分解機能は制御されている可能性が示唆されており、エストロゲン依存的にタンパク分解シグナルを担うユビキチン鎖が増加することを見出している。このようなエストロゲン依存的なタンパク分解の標的として、M期制御因子群を同定している。すなわち、エストロゲンはM期制御因子群のタンパク分解を誘導することで、細胞増殖に寄与していると考えられる。実際にこのタンパク分解機能を欠失した細胞株ではエストロゲン依存的な腫瘍の増大が抑制されることがmouse xenograft modelで示唆されている。 また、エストロゲンのタンパク分解作用経路を明確にするために新たな分解基質の特定を進めている。それにあたり、既存の分解基質を用いて、タンパク分解を担うエストロゲン受容体複合体の基質認識サブユニットの特定を行った。当初はエストロゲン受容体が基質認識サブユニットとして機能する可能性を予測していたが、エストロゲン受容体/酵素活性本体/分解基質の結合様式を検討したところ、酵素活性本体が分解基質の認識サブユニットとして機能していることが示された。また、エストロゲン受容体はリガンド依存的な酵素活性制御因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、エストロゲン依存的な分解基質の同定することで、エストロゲン作用経路を解明することを目的としている。平成24年度は分解基質として細胞周期制御因子の同定に成功している。この分解基質は、G2/M期からG1期への進行を担う因子群のタンパク分解に寄与することが示唆されている。 従来エストロゲンは遺伝子発現制御を介して細胞周期のG1期からS期への進行を制御することが知られているが、本研究課題のタンパク分解基質を同定することにより、エストロゲンが新たにG2/M期からG1期への進行制御を担う可能性を見出した。このように分解基質を明確にすることでエストロゲンの新たな作用点を見出す例を示すことに成功しており、平成24年度の研究はおおむね順調に進展していると言える。また、エストロゲン依存的なタンパク分解能の個体レベルでの機能解析も進めており、mouse xenograft modelにより、エストロゲンのタンパク分解能がエストロゲン受容体陽性の乳がん細胞増殖に関与していることが示唆されている。 この一連の解析系をモデルとして、現在新たなタンパク分解基質の同定と機能解析を進めている。エストロゲン依存的なタンパク分解系のうち基質認識を担う因子を同定しており、この因子を主軸としてaffinity精製を行っている。すでに、基質候補群を幾つか取得しており、今後in vivo/vitroでの機能解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に同定した分解基質候補群の機能解析に注力する。エストロゲン受容体の種々のアゴニスト・アゴニストを培養細胞に添加し、内因性の候補因子群のタンパク量の変動を検討する。この変動を指標にエストロゲン依存性タンパク分解基質の絞り込みを行う。抗体因子の存在しない機能未知因子については、過剰発現系においてタンパク量の変動を検討し、変動が確認された因子についてのみ抗体を作成し、内因性でのタンパク変動を評価する予定である。 また、これらのタンパク分解は基質に分解シグナルであるユビキチン修飾が付加されることで誘導されることが知られている。そこで、分解基質のユビキチン化サイトを特定する。また、これまでに分解基質の基質認識サブユニットを特定しており、このサブユニットの基質認識サイトを特定する。特定後はTALEN systemを用いてこれらのサイトに変異をいれた機能失活変異体細胞を樹立する予定である。樹立細胞をmouse xenograft modelに供することで、エストロゲン依存的な乳がん細胞増殖におけるタンパク分解機能の作用点を明確にする予定である。また、これらのモデルマウスを用いて、既存のアゴニスト/アンタゴニストがエストロゲン依存的なタンパク分解能に与える影響を個体レベルで評価し、従来の転写機能に与える影響との比較を行う予定である。 さらに、個体レベルでの評価が得られた基質に関しては優先的にリコンビナントタンパクを作成し、 in vitro ubiquitination assay系に供することで、確かに分解基質であることを示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費のうち、物品費についてはタンパク精製に用いる消耗品(大量培養の際の培地や血清、精製に用いる抗体、培養ディッシュなど)や、in vitroや培養細胞での解析系(抗体作製、抗体、各種酵素類)、タンパク同定や修飾解析などのプロテオミクス解析などに関わる消耗品・器具類の経費に充足される。また、分解基質の機能解析にあたりTALEN systemを導入する予定であり、systemの設計費にあてる予定である。これらのsystemで樹立された細胞は、mouse xenograft系に供する予定であり、表現系解析のためのマウス購入費及び維持費にあてる予定である。 物品費以外の使用計画としては、研究成果の還元に関わる費用にあてる予定である。次年度は平成24年度から進めてきた研究成果を積極的に発表したいと考えている。具体的には研究成果を原著論文とした国内外の科学誌に投稿・掲載を視野に入れている。また、国内外の学会やシンポジウムに積極的に参加することで、研究成果を公表する予定である。そこで、物品費以外の研究費はこれら論文の掲載費、旅費などに関連する経費として使用予定である。
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