2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24770193
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
小山 宏史 基礎生物学研究所, 初期発生研究部門, 助教 (10530462)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞質分裂 / 多細胞生物 / ミオシンII |
Research Abstract |
動物細胞の細胞質分裂の遂行においては、モータータンパク質であるミオシンIIが必須の役割を果たすと信じられてきた。しかし、近年になり、細胞外環境、あるいは、細胞種によってはミオシンIIに依存しない細胞質分裂システムが存在することが明らかとなった。本研究では、細胞質分裂のミオシンIIタンパク質への依存性を指標とすることで、多細胞生物に特異的な細胞質分裂システムの探索を計画した。マウスの初期胚を材料として、ミオシンIIを阻害した条件においても細胞質分裂が可能な細胞があるか否かの検証を計画した。 本年度では、初期胚発生時の細胞数をカウントするシステムの構築を行なった。すなわち、細胞核を蛍光ラベルした遺伝子改変マウスを用いて、細胞核を自動的にカウントする画像処理・解析システムを作成した。モデルケースとして、初期胚の約32細胞期までの細胞数のカウントを自動化した。自動化に成功したことで、数百~数千細胞期の解析が促進されることが期待できる。 ミオシンIIを蛍光ラベルした遺伝子改変マウスを、理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターの協力で作成中である。本マウスは、ミオシンIIの阻害剤を添加した実験条件において、確かにミオシンIIが阻害されているかを確認するために使用する予定である。また、ミオシンII非依存的な細胞質分裂が発見された場合に、ミオシンIIの動態の解析に使用する予定である。 細胞質分裂システムの力学的解析のために、力学センサーの実用化を試みた。既存の力学センサーの有効性を培養細胞を用いて検証したところ、強い細胞毒性を持つことが分かった。したがって、力学センサーを発現する遺伝子改変マウスの作成に適さないと判断した。現在、新規の力学センサーを構築し、培養細胞で検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞数を自動的にカウントする画像処理・解析システムを構築したことは本研究の遂行において非常に重要である。すなわち、マウス初期胚発生期の細胞数の変化を追跡することができる。したがって、細胞数の増加が著しい組織・時期を同定することも容易となる。また、ミオシンIIを阻害した条件の元でも細胞数の増加を起こすことができる組織・時期を探索することが容易となる。一方、細胞質分裂のミオシンIIに対する依存性をマウス初期胚発生期の各組織・時期において検証する予定であったが、ミオシンIIの阻害実験はまだ十分には行なっていない。これは、細胞数をカウントするよい測定系を構築することを優先したためである。よい測定系を構築することができたので、今後の研究の促進が期待できる。 ミオシンIIの動態を観察するための、ミオシンIIを蛍光ラベルした遺伝子改変マウスの作成は順調に進んでいる。作成したマウスは、ミオシンIIを阻害する実験における阻害の状態の確認、ならびに、ミオシンII非依存的な細胞質分裂システムを解析する際に非常に重要である。 力学センサーについては当初の計画より先行して進めてきた。しかし、既存の力学センサーに強い細胞毒性があることが判明したので、これを用いることを断念した。そこで、新規の力学センサーの開発を進めてきた。また、力学センサーの性能を検証するために、細胞を人工的に伸展させる装置を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に構築した細胞数の自動カウントシステムを用いて、マウス初期胚発生における細胞数の変化を計測する。それによって、各組織・時期における細胞の増加率を測定する。次に、細胞数の増加が顕著な組織・時期を中心として、ミオシンIIの薬剤による阻害実験を行う。細胞数の増加が阻害剤に耐性を示す組織・時期がある否かを検証する。同定された組織・時期では、ミオシンII非依存的な細胞質分裂を引き起こしている可能性が高い。ミオシンIIが阻害剤によって確実に阻害されているか否かは、本年度に引き続き作成するミオシンIIを蛍光ラベルした遺伝子改変マウスを用いて、その動態の異常の有無を検出することで行う。 ミオシンII非依存的な細胞質分裂を起こす細胞が同定されたならば、その細胞における細胞質分裂システムを解析する。具体的には、細胞形状の動態、細胞分裂装置の動態、ならびに、細胞骨格の動態を観察する。これらの動態の観察は、細胞膜、中心体、ならびにアクチンなどを蛍光ラベルした遺伝子改変マウスを用いて行う。これらの遺伝子改変マウスは既に当研究室で構築されている。これらの動態をミオシンII依存的な細胞質分裂の場合と比較することで、ミオシンII非依存的な細胞質分裂に特徴的な動態の抽出を試みる。 細胞形状、細胞分裂装置、および、細胞骨格の動態の情報から、ミオシンII非依存的な細胞質分裂システムの提案を目指す。すなわち、上記の情報から細胞の力学的状態を推測し、コンピュータ・シミュレーションによって分裂の可否を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度では、ミオシンIIの阻害実験に入る前に細胞数の自動カウントシステムを構築することを優先したため、次年度使用額が生じた。ミオシンIIの阻害実験は25年度に行う。 マウス初期胚発生における細胞数の変化を計測するために、マウス、および、マウス胚の培養試薬が必要である。また、ミオシンII非依存的な細胞質分裂を探索するために、ミオシンIIの阻害剤が必要である。細胞形状、細胞分裂装置、ならびに、細胞骨格の動態を観察するための遺伝子改変マウスが必要である。細胞質分裂のコンピュータ・シミュレーションを行うための計算機が必要である。細胞生物学系の学会における情報収集が必要である。さらに、研究成果を国内外の学会、ならびに、論文として発表するための経費が必要である。
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