2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24770193
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
小山 宏史 基礎生物学研究所, 初期発生研究部門, 助教 (10530462)
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Keywords | 細胞質分裂 / 多細胞生物 |
Research Abstract |
近年、細胞質分裂の多様なメカニズムの存在が指摘されるようになった。特に、モータータンパク質である非筋肉性ミオシンIIに依存しない細胞質分裂システムが存在することが明らかとなっている。しかしながら、多細胞生物における細胞質分裂システムの多様性についての理解は非常に遅れている。本研究では、細胞質分裂のミオシンIIへの依存性を指標とすることで、多細胞生物に特異的な細胞質分裂システムの発見を目指している。 本年度では、マウスの初期胚において、ミオシンIIを阻害した条件においても細胞質分裂が可能な細胞が存在するか否かを検証した。マウスの初期発生期の様々な時期に対してミオシンIIの阻害剤を添加し、細胞増殖の有無を調べた。その結果、発生の比較的早い時期において、ミオシンIIの阻害剤の添加に対して細胞質分裂が耐性を示す細胞が存在することを突き止めた。この細胞におけるミオシンIIならびにアクチン等の細胞骨格系の動態を観察することは、細胞質分裂の機構を理解する上で重要である。そこで、ミオシンIIを蛍光ラベルした遺伝子改変マウスを作出することを計画した。理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターの協力で実際に遺伝子改変マウスの作出に成功した。この遺伝子改変マウスは、細胞質分裂だけでなく、胚発生におけるミオシンIIの動態の研究に広く有用と考えられる。さらに、ミオシンIIおよびアクチン繊維を検出し、その動態を解析するための画像処理・解析手法を、自然科学研究機構の木森博士の協力で作成した。ミオシンIIおよびアクチン繊維の詳細な動態の理解に有用と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミオシンIIの阻害剤の存在下で細胞質分裂を遂行できる細胞を発見したことは、本研究の根幹にかかわる大きな進展である。この細胞では、ミオシンIIに依存しない新規の機構によって細胞質分裂を遂行している可能性が考えられる。発生のより遅い時期での解析は遅れている。細胞数が非常に多いことにより、細胞増殖の有無を正確に測定することが容易でないことが原因である。細胞数をカウントする画像処理・解析システムを改良して行う必要がある。 ミオシンIIを蛍光ラベルした遺伝子改変マウスの作出は順調に進んだ。この遺伝子改変マウスを利用して、ミオシンIIの阻害剤に対して耐性を示す細胞質分裂において、ミオシンIIが通常とは異なる挙動を示すか否かを検証することが可能である。また、細胞骨格系の動態を解析するための画像処理・解析手法についても良好な結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
ミオシンIIの阻害剤の存在下で細胞質分裂を遂行できる細胞について、そのメカニズムの解析を行う。具体的には、ミオシンIIおよびアクチン等の細胞骨格系のタンパク質の挙動を詳細に観察する。この時、ミオシンII依存的な細胞質分裂との相違に注意しながら行う。さらにその観察結果をもとに、数理モデルの構築を行い、細胞質分裂のメカニズムの理解を目指す。また、発生のより遅い時期においても引き続きミオシンIIの阻害剤に耐性を示す細胞質分裂の存在の検証を行う。細胞数を自動的にカウントするシステムを有効利用して探索する。細胞質分裂の力学的機構を理解するために、機械的な力を検出する既存の分子プローブの活用を試みたが、細胞毒性ならびに検出感度の点で実用に耐えなかった。今後これらの改良を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予想より少ない探索によってミオシンIIの阻害剤に耐性を示す細胞が発見されたので、阻害剤、マウス、試薬等の新規購入を抑えることができた。計算機シミュレーションの予定が遅れたので計算機の購入を先延ばしにした。 引き続きマウスを用いた解析を行う。ミオシンIIおよびアクチンなどの細胞骨格系を蛍光ラベルした遺伝子改変マウスを主に使用する。また、発生のより遅い時期の解析が容易でないことが分かったので、市販の画像処理・解析ソフトウェアの導入を行い、細胞増殖の有無の検証を効率化する。数理モデルの構築とシミュレーションのための計算機を購入する。
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