2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞内の物質循環における細胞質ダイニンと積荷分子のダイナミックな相互作用の役割
Project/Area Number |
24770197
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大谷 哲久 独立行政法人理化学研究所, 形態形成シグナル研究グループ, 研究員 (50415105)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞質ダイニン / 細胞極性 / 細胞伸長 / 細胞内シグナル伝達 / 細胞内輸送 / リン酸化 / ショウジョウバエ / 細胞骨格 |
Research Abstract |
今年度は、活性化IKKεの微小管マイナス端への集積機構の解析を集中して行った。まず、spn-Fとikkεの遺伝学的関係について検討した結果、spn-Fとikkεが同じ遺伝的経路で作用し、spn-Fはikkεの上流で作用することが明らかとなった。そこで、ショウジョウバエ剛毛細胞においてSpn-Fと活性化IKKεの局在を検討したところ、両者が微小管のマイナス端が集積する剛毛先端部で共局在し、Spn-Fと細胞質ダイニンが活性化IKKεの微小管マイナス端への集積に必要であることが明らかとなった。そこで、Spn-F複合体の生化学的解析を行った結果、Spn-FがIKKε、細胞質ダイニン、ダイニン軽鎖と複合体を形成することが明らかとなった。さらに、Spn-Fの構造機能解析を行った結果、Spn-FはIKKε、細胞質ダイニン、およびダイニン軽鎖とそれぞれ異なった領域を介して結合することが明らかとなった。そこで、Spn-Fの様々な変異分子をショウジョウバエの剛毛に発現したところ、Spn-Fは細胞質ダイニンとの結合依存的に微小管マイナス端に集積した。また、Spn-Fの細胞質ダイニンおよびIKKεとの結合領域は剛毛の正常な形態形成に必須であったが、ダイニン軽鎖との結合領域は必須ではなかった。これらの結果は、IKKεがSpn-Fを介して細胞質ダイニンと複合体を形成し、剛毛の先端部に輸送されて細胞内の物質循環を促進することにより剛毛の正常な形態形成を制御することを示している。先行研究においては既にIKKεが微小管の方向性を規定するのに重要であることが知られていることから、微小管-ダイニン-Spn-F/IKKεの三者の正のフィードバックが存在し、このフィードバック回路によって細胞伸長時の細胞極性の維持が持続的に維持されていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の大きな課題であった活性化IKKεの微小管マイナス端への集積機構の解析を重点的に進めた結果、活性化IKKεの微小管マイナス端への集積を保証する分子機構をおおむね解明することができた。特に、微小管-ダイニン-Spn-F/IKKεの正のフィードバック回路による細胞極性の維持のメカニズムを明らかにしたことについては、当初想定していた以上の研究成果であり、剛毛細胞のみならず、広く細胞極性の動的維持機構を考えるうえで興味深い結果であると考えている。今年度のもう一つの課題であった剛毛における細胞質ダイニンの積荷分子の道程についてはSpn-Fが細胞質ダイニンの積荷分子であることを生化学的、遺伝学的方法によって証明することができた。しかし、Spn-Fが直接細胞質ダイニンと相互作用をするのか、あるいは他のアダプター分子を介して結合するのかはまだ明らかではない。また、他の細胞質ダイニンの積荷分子の候補分子については、Hookがダイニンの補助的サブユニットであるNudEと結合するとの結果を得ているが、まだ細胞質ダイニンの積荷分子であると結論づけるためには、さらに生化学的また遺伝学的な証拠を積み重ねる必要があると考えている。これらの解析は想定よりも遅れているが、これは活性化IKKεの微小管マイナス端への集積機構の解明に力を注いだ事が主要因であると考えている。総合するならば、今年度は計画していた研究目的をおおむね順調に達成でき、また想定以上の進展も一部得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度得られた結果を論文として発表するとともに、Spn-Fとダイニンとの相互作用の分子的機構、特に他のアダプター分子との結合を介するかどうかを生化学的に検討する。また、剛毛において他の細胞質ダイニンの積荷分子の同定を進め、特に現在得られている候補分子について細胞質ダイニンとの関係性についての確証を得ることを目指す。これらの結果を足掛かりとしてIKKεによる細胞質ダイニンと積荷分子の相互作用の制御機構に生化学的、細胞生物学的、また分子遺伝学的手法を用いて迫ることが可能となると考えている。また、今年度の成果から細胞伸長時の細胞極性の維持機構が明らかとなったが、この結果は細胞伸長がどのように停止するのか、あるいはIKKε複合体を伸長中に阻害した際にどのような効果をもたらすのか、といった疑問を提起している。そこで、今後、細胞伸長の停止機構について剛毛細胞の伸長が停止する時の細胞動態を解析し、またIKKε複合体をレーザー照射あるいは薬物処理によって剛毛細胞の伸長の途中で阻害し、その効果について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はIKKεとSpn-Fの抗体を作成するための費用を計上していた。抗体については順調に作成が進行しているが、その完成・納品が今年度中には間に合わず、次年度にずれ込んだため、未使用金が生じている。次年度には抗体が完成することが期待される。また、細胞質ダイニンの積荷分子の同定を進めるためには分子生物学的実験、生化学的実験が必要となるため、適切な試薬また実験器具について購入する。また、今年度の研究成果を公表し、最近の研究動向を調査するため、国内外への学会への参加を予定している。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Dynamic Organization of Paracrystalline Actin Bundles by IKKε2012
Author(s)
Tetsuhisa Otani, Takuya Maeda, Kazuyo Misaki, Shigenobu Yonemura, and Shigeo Hayashi
Organizer
Joint Meeting of The 45th Annual Meeting of the Japanese Society of Developmental Biologists & The 64th Annual Meeting of the Japan Society for Cell Biology
Place of Presentation
神戸国際会議場・神戸商工会議所、兵庫県神戸市
Year and Date
20120528-20120531
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