2012 Fiscal Year Research-status Report
発生過程で細胞運命を規定する転写因子の生涯にわたる発現制御機構
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24770202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚原 達也 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90586413)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / key developmental gene / DNAメチル化 / ヒストン / 未分化状態 |
Research Abstract |
我々はこれまでに、メダカ胞胚期において発生に重要な役割を果たす遺伝子(key developmental gene)はDNA低メチル化領域に存在し、活性型および抑制型のヒストン修飾が共存する(bivalent)状態にあること、それらのkey developmental geneにおいて発生後期ステージ以降に発現を維持する際に、non-promoter DNAメチル化が生じることを、筋肉における解析から明らかにしてきた。平成24年度は、ゲノムワイド解析により上記のnon-promoter DNAメチル化と遺伝子発現レベルとの相関の普遍性を解析した。まず、筋肉においてRNA-seq解析を行い、クロマチン修飾の状態との比較を行った。その結果、胞胚期にDNA低メチル化・bivalentなヒストン修飾を受ける遺伝子の16%が成魚筋肉においてnon-promoter DNAメチル化を受けることを見出した。さらに、それらの遺伝子座は抑制型ヒストン修飾レベルは低く、遺伝子発現レベルは高いということを明らかにした。この結果は肝臓においても同様の傾向であり、non-promoter DNAメチル化による抑制型ヒストン修飾の抑制がkey developmental geneの発現維持に普遍的に寄与している可能性が示唆された。さらに、近年マウスの脳において遺伝子発現レベルとの正の相関が指摘されているDNAヒドロキシメチル化についても解析を行い、上記のnon-promoter DNAメチル化の一部はヒドロキシ化されていることを明らかにした。マウスにおける局所的解析からもこれらの結果を指示する結果が得られたため、本研究が見出したkey developmental geneの発現維持におけるnon-promoter DNAメチル化の関与は脊椎動物の様々な器官に広く保存された現象であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、key developmental geneにおいて発生後期ステージ以降に生じるnon-promoter DNAメチル化がと発現レベルに正の相関があることをゲノムワイドで、筋肉と肝臓という二つの組織で示すことができた。さらに、上記のnon-promoter DNAメチル化の一部はヒドロキシ化されていることも明らかにした。したがって、上記の機構は脊椎動物の様々な器官に広く保存されていることが示唆された。平成24年度はこのnon-promoter DNAメチル化が実際にkey developmental geneの発現維持に寄与しているかを明らかにするまでには至らなかったが、現在その準備も進めており、研究目的の達成にむけておおむね順調には進んでいると考えた。 一方、初期胚におけるクロマチン状態の確立機構の解析については、平成24年度は少ない細胞数でクロマチン状態を解析する系の立ち上げを行い、すでに200細胞前後からなる桑実胚期における局所的クロマチン解析には成功している。さらに、初期胚におけるクロマチン状態の制御に関わる候補因子についても新たな因子の同定に成功した。したがって平成25年度により詳細な解析を進める準備が整ったと考えられ、こちらについてもおおむね順調に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度における研究の推進方策を以下の二つの項目について記載する。 ①key developmental geneにおけるnon-promoter DNAメチル化の意義の解明 ②初期胚において胞胚期で見られるクロマチン状態を確立するメカニズムの解明 ①発生後期以降に生じるnon-promoter DNAメチル化を阻害し、key developmental geneの発現に与える影響について解析する。平成24年度においてメダカ筋肉でドミナントネガティブ型のde novo DNAメチル化酵素(Dnmt3)を過剰発現するトランスジェニック系統を作製したが、期待していたDNAメチル化の阻害が生じなかった。したがって、平成25年度は、conditionalノックアウトが可能であるマウスを用いて、体節特異的なDnmt3遺伝子(Dnmt3aおよび3b)のノックアウトを行い、筋肉で発現するkey developmental geneであるZic1やSix2の発現に対する影響を解析する。すでに理化学研究所との共同研究でfloxマウスおよびCreマウスの飼育を開始している。 ②平成24年度に確立した方法を用い、初期胚におけるクロマチン修飾のダイナミクスを明らかにする。また、最近報告された特異的な遺伝子座におけるクロマチン状態をin situで可視化する手法を応用することで、より卵割期の初期におけるクロマチン状態の変化も明らかにする。さらに、平成24年度に同定した初期胚におけるクロマチン制御因子の機能を、モルフォリノオリゴによるノックダウンやドミナントネガティブ変異型タンパク質の過剰発現、相互作用因子の解析を通じて明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においても、昨年と同様分子生物学実験関連費用やクロマチン修飾解析関連、次世代シーケンス関係の試薬費用に最も研究費を使用する。また、理化学研究所発生再生科学総合研究センターにてマウスの飼育・解析を行うため、国内出張費も多く必要となる。さらに、今年度は国際学会において研究成果を発表するための費用も必要となると考えられる。
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Research Products
(2 results)