2012 Fiscal Year Research-status Report
器官培養法を用いたマウス精子形成に必須な液性因子の解明
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24770216
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
佐藤 卓也 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70599505)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 精子形成 / 器官培養 / 不妊治療 |
Research Abstract |
哺乳類における精子形成機構の分子レベルでの詳細は、今なお未解明の領域である。最近、精巣組織片を器官培養することにより、精子幹細胞から精子産生までの精子形成の全過程をin vitroで再現することが可能になり、生体外で精子形成を解析することが可能となった。。 本研究では、不妊モデルマウス(Sl/Sldマウス)の精巣を培養し、種々の成長因子を培養液に添加することにより、精子幹細胞からの精子形成誘導能を調べ、精子形成機構の一端を解明することを目的としている。その研究基盤確立のため、本年度はSl/Sldマウスの組織培養し、精子形成を誘発させる方法を開発した。 まず始めにSl/Sldの仔マウスの精巣を、成長因子を含まない通常培地で器官培養したところ、精子形成の兆候は見られなかった。次にKITL(分泌型)を添加した培地で培養を行ったところ、精子形成が進行し精母細胞と少数ながら円形精子細胞が形成されることが分かった。KITLの濃度に比例して円形精子細胞の出現率は増加したが、伸長精子細胞や精子は見られなかった。そこで、KITLとシナジー効果を持つと報告されているサイトカインを検討した。その結果、マクロファージ刺激因子がKITLと共に相乗的に精子形成を促進し、伸長精子細胞や精子までもが産生されることを見いだした。また、その精子細胞の妊孕能は、精子細胞の顕微授精で不妊マウスの仔が誕生したことで確認された。これらの結果は、精巣内環境異常を原因とする雄性不妊において、その原因となっている不足因子の補充によってin vitroでの治療が将来的に可能であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
男性不妊モデルマウスの精巣を培養し、体外で精子を産生可能な方法を開発に成功し、ほぼ当初の計画通りの成果を得られた。それによって、この組織培養法を使った、精子形成の根幹となっている外的因子の同定のための研究基盤を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
精子形成に必須な外的因子群を特定する実験を継続し、さらに培養液の組成、各因子の濃度、およびその組み合わせ等を検討する。不要な因子は排除し、もっとも単純な培養液組成を決定する。評価に際しては、①減数分裂中期、②減数分裂完了(半数体形成)、③精子産生を別箇の到達点として判定し、各因子毎にどこまでの到達に必要かを評価して、それらの因子が精子形成のどの段階に関与するかを検討する。さらにSl/Sldマウス以外の不妊モデルマウスにおいても器官培養法による精子形成誘導が有効かどうかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に使用予定だったノックアウトマウスの搬入等の遅れにより、実験開始が遅れたため、次年度に研究費の多くを繰り越すことにした。また、研究室の転居することになったため、本年度購入予定だったオートクレーブを転居後に購入することにした。その他に海外での研究成果発表と国内での発表を予定しており、その渡航費を予定している。残りの大半の研究費は、培地や培地添加物、精子形成必須因子のスクリーニングに使用する成長因子などの消耗品に使用する予定である。
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