2012 Fiscal Year Research-status Report
トラザメ胚を用いた脊椎動物の顎の進化の発生学的考察
Project/Area Number |
24770217
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
武智 正樹 岩手医科大学, 医学部, 助教 (10455355)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 軟骨魚類 / トラザメ / 顎の獲得 / 進化発生学 / Evo-Devo / Dlxコード |
Research Abstract |
申請者は脊椎動物における顎の獲得の発生学的メカニズムの正確な進化のシナリオを描くため、顎口類の中で最も古い起源をもつ軟骨魚類のデータを得ることが必須であると考えた。まず、これまでマウスやニワトリで報告されている顎のパターニング機構に関わる遺伝子について、自らが構築したトラザメEST配列データベース(http://transcriptome.cdb.riken.go.jp/vtcap/index.htm)を利用して相同遺伝子を単離し、トラザメ胚の顎形成ステージにおける時間空間的発現パターンを調べた。顎の背腹軸に沿ったパターニングに重要な役割を担うDlx遺伝子群(Dlx1-6)を単離し、胚発生時期おける時空間的発現パターンをin situ hybridization法により検討した。その結果、これらの遺伝子は咽頭弓において背腹軸に沿って入れ子式の発現パターンを示し、他の顎口類と同様の発現パターンであることを明らかにした。このような発現パターンをDlxコードと呼ぶが、今回の結果はこのDlxコードが顎口類全体に保存されていることを示唆する結果となった(Takechi et al., 2013)。さらに、顎関節の形成に重要な役割を果たす遺伝子であるBapx1の時空間的な遺伝子発現パターンをトラザメ胚で解析したところ、咽頭胚後期(ステージ25, 27)では咽頭内胚葉や頭部中胚葉に、また顎関節形成期(ステージ28-29)では顎関節に発現することを明らかにし、顎関節におけるBapx1の発現パターンも顎口類で保存されていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、以下の3つの研究計画から成る。(1)トラザメ胚の神経堤細胞形成ステージにDiIで標識し、細胞の追跡実験を行う(2)顎のパターニング遺伝子をトラザメ胚で単離し、顎形成期の胚で時間空間的な発現パターンを調べ、羊膜類の発現パターンと比較する(3)Fgf/Bmpシグナリングカスケードの阻害剤をトラザメ胚に導入し、表現型を調べる。このうち(2)については平成24年度中に必要なデータを概ね得ることができた。残る2つの研究計画は現在予備実験中であり、平成25年度中に結果を得る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度はトラザメ胚を用いたラベリング実験や遺伝子機能阻害実験を行う。この実験手法は世界的にまだ完全には確立されていないため、現在予備実験を行い、試行錯誤している段階にある。最近、同様の手法を用いた実験の報告例があったため(Gillis et al., 2013)、このような手法も参考にしながら進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、サメ水槽と水質管理用品(人工海水用塩, ヨウ化カリウム, pH・硝酸・亜硝酸測定用試薬等)や研究用試薬(分子生物学実験用の各種酵素・培地等, シグナル阻害剤, in situ用試薬, 免疫組織化学染色用抗体等)、あるいは研究用消耗品(手術用ピンセット, ビーズ, タングステン針, 参考書等)に使用予定である。
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Research Products
(2 results)