2012 Fiscal Year Research-status Report
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24770222
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
尾内 隆行 独立行政法人理化学研究所, 形態進化研究グループ, 研究員 (20617279)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
申請者は脊椎動物の頭部の起源を理解するために脊索動物の最後の共通祖先に最も近いと考えられている現存する脊索動物であるナメクジウオを用いて脊椎動物胚の発生と比較を行った。注目した点は1918年、イギリスの動物学者グッドリッチが指摘した脊椎動物の頭部は体幹部の発生と相同であるという点である。原始的脊椎動物であるサメの胚を用いた研究から脊椎動物の頭部中胚葉は体幹部のそれと異なる遺伝的背景を持つことが解っている。(Adachi et al 2012) そこで申請者はナメクジウオ胚においてサメ胚で頭部に発現する遺伝子の発現パターンをin situ hybridization法により調べたところナメクジウオの原腸胚期では頭部中胚葉マーカーであるgscやdkk1が原口から体軸の前端まで発現していることがわかった。 一方体幹部マーカーであるdeltaがgscの発現と重なることも解った。従ってナメクジウオ胚では頭部と体幹部の領域化が起きておらずシグナル経路の極化が行われていないことが示唆された。 次に最も原始的である脊椎動物であるヤツメウナギにおいてgscとdeltaの発現を調べたところサメ胚と同様に発現が重ならないことから脊椎動物の頭部と体幹部の分離は遺伝子発現レベルでは円口類ヤツメウナギからすでに起きていたことが示唆された。 次にナメクジウオ胚の体節が脊椎動物の体節の発生と同じ遺伝子プログラムを利用しているのか調べるために脊椎動物胚で体節の分節形成に必須のシグナルであるNotch/delta シグナルの機能阻害を行ったところナメクジウオ胚において体節の分節構造形成が阻害された。従ってナメクジウオの体節は脊椎動物の体節と同じシグナル経路を使っていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定ではサメ胚でのエレクトロポレーション法の確立などを考えていたが、その必要はなくなり、現在はアフリカツメガエルを用いて脊椎動物の中胚葉の進化がどのような発生プロセスの変更でおきたのか実験的に証明しようとしている。出てきているデータも非常に簡潔で現在論文投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
カエル胚を用いて頭部中胚葉と体幹部中胚葉が以下に分離されるか解析している。 具体的にはWnt/pcp経路の調節により中胚葉の分離が起きない胚を作成し、これとナメクジウオの原腸胚を比較することで脊椎動物の中胚葉がいかに進化したか明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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