2012 Fiscal Year Research-status Report
二つの形成体因子ChordinとNogginの協調的な背腹軸パターンの安定化
Project/Area Number |
24770223
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
猪股 秀彦 独立行政法人理化学研究所, 器官発生研究グループ, 上級研究員 (60372166)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 該当なし |
Research Abstract |
本年度はChordinとNogginが異なる空間パターンを制御する機序を明らかにするために、濃度勾配の形状を規定する拡散・分解に注目して解析を行った。 1. 拡散 拡散係数の算出には、FCS(蛍光相関分光法)及びFRAP(光退色後蛍光回復法)を用いて解析を行った。いずれの場合も、Tgfβのシグナルペプチドを付加した分泌型eGFPの後ろに目的蛋白質(ChordinまたはNoggin)を融合し、細胞間隙における各々の蛋白質の拡散速度を定量した。その結果、NogginはChordinに比べ拡散速度が非常に遅く、Chordinは分泌型eGFPと同程度の速い拡散速度を有する事が示された。 2. 分解 Hisタグを付加したChordin及びNogginを培養細胞に強制発現させ、培養上清に分泌した各々の蛋白質をNiビーズにより精製した。その後、等量の精製蛋白質を胞胚期の胞胚腔にインジェクションし、インキュベーションした後に溶解し各々の蛋白質を免疫沈降後、ウェスタンブロティング法により検出した。Noggin蛋白質は6時間インキュベーションした後も安定であったが、Chordinは30分後には約半量の蛋白質が分解された。このことから、NogginはChordinに比べ、in vivoにおいて非常に安定である事が示された。 これらの結果から、Chordinは速い拡散速度を有するが分解速度が大きいため急勾配を形成し、一方、Nogginは拡散速度が遅いにも関わらず分解速度が非常に小さいため緩勾配を形成している事が明らかとなった。このような蛋白質の質的な違いにより、ChordinとNogginは異なる空間パターンを制御している事が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、本年度においてChordinとNogginの質的な違いを明確にした。また、Chordin分解酵素の阻害因子として機能しているSizzledの拡散および分解を定量し、Sizzledは速い拡散速度を有し、分解速度が遅いため緩勾配を形成していることを見いだした。これらの結果は本プロジェクトで仮定しているLong-range feedback modelと合致しており、定量結果をもとにモデルに各々の濃度勾配を導入することが出来る。また、このモデルを介して、ChordinとNogginがどのようにして頑強な背腹軸パターン形成を構築しているのか解析が可能である。 BMP応答のプロモーターを用いたイメージングに関しては、in situレベルで内在性のBMP活性依存的にLuciferaseが応答する事を確認している。ただし、Luciferaseを用いたリアルタイムイメージングに関しては、発光強度が微弱なためBMPシグナルの応答を検出する事が出来ていない。この問題を解決するために、近年開発されたNanoLucまたはBRET(生物発光共鳴エネルギー移動)を用いて、高発光化することにより検出感度を上昇させる。一方、βCatenin-MOにより完全腹側化させた胚を用いて、BMP活性の強度と各々のマーカーの発現レベルを定量的に解析した。これらの定量結果をin situのデータに当てはめる事により、in situの発現領域とBMP活性レベルを相対的に評価する事が可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果から、Chordin(急勾配)、Noggin(緩勾配)、Sizzled(緩勾配)が形成する濃度勾配の形状が示された。また、Chordinの空間分布が主にChordin分解酵素による分解制御によって規定されることが明らかとなった。Chordin分解酵素の活性は主にSizzledにより制御されており、今後はChordin、Noggin、Sizzledが包括的にどのようにして背腹軸形成を規定しているのか検証する必要がある。さらに、上述したBMPシグナルのLuciferaseを用いたリアルタイムイメージング、または定量的なin situ法を用いることにより、発生過程におけるBMPシグナルの動的な変動を明らかにする。 さらに、これらを統合し数理モデルの構築を試みる。最初にNogginを除いたChordinとSizzledの関係に注目し、背腹軸が再現されるモデルの構築を試みる。さらに、このモデルに様々な摂動を与え、実験結果と比較する(Chordin-MOによる腹側化、Sizzled-MOによる腹側化)。次に、このモデルにNogginの勾配条件(小さな拡散速度と分解速度)を導入し、Chordinの分解および背腹軸パターン形成に与える影響を評価する。特に、Nogginの緩勾配がどのようにしてSizzledを介してChordinの勾配を制御し、頑強な背腹軸パターン形成を保証しているのか解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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