2013 Fiscal Year Research-status Report
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24770227
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
北沢 千里 山口大学, 教育学部, 准教授 (30403637)
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Keywords | 棘皮動物 / 成体原基形成 / 形態進化 / 割球分離 |
Research Abstract |
本研究では、棘皮動物の幼生から成体への体制変化機構の追跡から、動物の形態形成機構の進化多様性について解明していくことを目的としている。実験発生生物学的手法を駆使し、分子生物学的手法を取り入れながら、ウニ類を主体とした棘皮動物の発生過程でみられる体軸形成や、成体原基形成の機構に注目して、系統進化について解明していくことを目的としている。 今年度は、体軸形成機構について、羊膜陥を介した成体原基形成を行うバフンウニを用いて、他種で左右極性を攪乱すると知られているNodal阻害により解析を進めた。その結果、羊膜陥の左右極性が攪乱され、その攪乱可能な時期を特定した。更に、近年、Nodalの上流因子として知られるDeltaの阻害も行い、羊膜陥の形成方向にNodalとは異なった攪乱が認められた。また、細胞塊を介して成体原基形成を行うサンショウウニに対するDelta阻害では、本来左側で形成される細胞塊が右側に形成される個体が増加した。本種についても、Delta阻害により細胞塊の左右極性を攪乱可能な時期を特定した。 次に、サンショウウニの細胞塊形成に必要な領域の特定を試みた。ウニ類の胚葉分化が起こる16細胞期に注目して、様々な割球分離実験を行った。予定外胚葉領域である中割球のみからは、細胞塊は形成されなかった。染色した中割球と非染色の大割球・小割球とのキメラ個体は、細胞塊を形成し、細胞塊が染色されていたことから、外胚葉領域が植物極側からの何らかのシグナルを受けて、細胞塊を形成していることが考えられた。また、胚に存在する中割球が1個であっても、細胞塊は形成されることが明らかとなった。 更に、山口県沿岸で採集可能なクモヒトデ類の1種について、変態に至るまでの発生過程を追跡することに成功した。本種は、これまで放卵・放精機構について知られておらず、今回その誘起法を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も、昨年度に引き続き、目的とするサンショウウニ科のウニ類が2種類にとどまり、実験材料の確保が困難な状態にあった。しかしながら、今年度は、ウニ類だけでなく、クモヒトデ類の発生にも注目することで、成体原基形成を追跡することに成功した。これらの結果の一部は、学術誌に数本掲載され、また現在投稿中である。 また、-80℃フリーザーの度重なる故障により、これまで蓄積してきた遺伝子解析用サンプルが使用不可能となった。現在、修理を重ね、今のところ、安定して稼働しているので、今年度、再度サンプル作成から行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ウニ類を主として、成体原基形成機構について、羊膜陥や細胞塊を形成する細胞運命の特定や、それら細胞と他領域の細胞との相互作用について、形態学的・実験発生生物学的・分子生物学的手法を用いて、解析を進める。また、羊膜陥や細胞塊を、あるいはこれらの予定領域を顕微手術により除去し、その後の細胞塊形成について追跡する。更に、薬剤処理と顕微手術を組み合わせて、これらの器官の左右極性との関係について調べる。他の棘皮動物についても、個体発生の追跡と共に、成体原基形成に関与する領域の特定を、上記の方法で行う。各種の胚や幼生から、体軸形成に関与する因子のクローニングを行った後、時間的・空間的な発現パターンを解析し、その機能について解析を行う。これらの結果から、棘皮動物の成体原基形成機構にみられる系統進化について考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品の見積もり金額と実質の支払金額との差額が生じたため。 今年度の残高(679円)を加えて、更に研究を推進していく予定である。
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