2013 Fiscal Year Research-status Report
霊長類の胸郭・前肢帯の骨格形態と立体配置:ヒト上科の運動適応の解明
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24770233
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加賀谷 美幸 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 特任助教 (50623790)
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Keywords | 肩関節 / 可動域 / 上肢帯 / 体幹 / 進化 / 比較解剖学 / 自然人類学 / 機能形態学 |
Research Abstract |
前肢帯骨格の可動範囲と骨格形態との関係を分析するため、霊長類研究所のニホンザルとアカゲザルの成体を麻酔し計測した。装置を前年度から改良し、被験体を30度傾斜の腹当て付き座面に前傾で座らせ、腕を任意の位置で固定するクランプをスライド式に支える自立式フレームを制作した。三次元デジタイザにより、受動的な挙上位や力を加えない肢位における肩甲骨の内側縁や肩甲棘、鎖骨、胸骨、上腕骨の上顆、脊柱などの三次元座標を体表から取得した。前方あるいは側方に腕を挙上する場合、ヒトでは肩甲骨が上方回旋して関節窩を頭側に向けるが、マカクザルでは肩甲骨が回旋とともに胸郭の背側へ偏位して内側縁が脊柱の棘突起と干渉し、また、肩と下顎が接触して可動範囲を制約していた。上記被験体のうち4個体のニホンザルを背臥位でCT撮影したところ、鎖骨外側半の位置は第5-7頚椎レベルで、ヒトに比して鎖骨が挙上した状態にあるといえる。これらのことから、前肢帯骨格の配置と偏位のパターンは、マカクザルではヒトのそれと異なっており、腕の挙上運動に対する前肢帯の寄与はヒトより小さいとみられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生体の霊長類を対象とし、麻酔を適用して計測実験を行っているため、被験体の体調や麻酔の効き方のばらつき等の影響で必ずしも計画通りには進行しなかった。作業の効率化をめざして、実験のたびに計測装置に改良を重ねたが、そのための機材の選定・調達・購入と実験(出張)スケジュールの兼ね合いによっても計画の進行に影響があった。
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Strategy for Future Research Activity |
動物の生体を用いた計測では、麻酔効力時間の制約と被験体の体調を考慮する必要があり、予定の計測をすべて制限時間内に実行することが現実的に難しいことが分かった。このため、関節の可動範囲の探索は生体で行い、これと並行して、関節柔軟性を保つ処方の固定処理液によって保存した屍体標本を用意することとし、これを用いて可動域の中間肢位について詳細な計測を行う方策をとる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
液浸標本の作製に用いる薬剤とその注入装置の購入のため、取扱い業者への問い合わせや注入装置の実物の見学などを行って検討していた。この間、当該物品の購入予算の確保のため他の不急の物品の購入を控えていたが、結果的に年度切り替えにまたがることとなった。 液浸標本の作製に用いる薬剤およびその注入装置の購入を行う。また、分析データの保管につかうメディアなど、不急と判断して購入を当面控えていたものや少額消耗品の購入を再開する。
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Research Products
(3 results)