2013 Fiscal Year Research-status Report
高効率遺伝子導入のための次世代スーパーアグロバクテリウムの分子育種
Project/Area Number |
24780001
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野中 聡子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50580825)
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Keywords | アグロバクテリウム / 形質転換 / GABA / エチレン |
Research Abstract |
植物への形質転換は植物科学において重要な技術の一つとされている.この技術は,土壌微生物のアグロバクテリウムが,植物へ遺伝子を導入する能力を持つことが発見された1970年代から開発が進んでおり,最も広く用いられている技術である.しかしながら,すべての植物種へ効率的に形質転換が出来るわけではなく,植物の形質転換の効率化を目指した改良がさまざまに行なわれている.本研究では,植物の形質転換の効率化を目指し,アグロバクテリウムの改良を行う.アグロバクテリウムの感染時,エチレンやGABA, サリチル酸が発生することが知られている.申請者はこれまでにエチレン発生を抑制するアグロバクテリウムを作成した.本申請課題においては,GABA及びサリチル酸分解能を付与したアグロバクテリウムの作成を試みる.これらの遺伝子の単独付与や,複数付与による形質転換効率の向上を目指す. また,GABAは,GABAトランスポーター(遺伝子atu2422)により,アグロバクテリウムヘ取り込まれる.その後,attKLMオペロンの作用により,クォーラムセンシングシグナルを抑制し,感染に必要なTiプラスミドの水平伝達や複製に関連するrepA遺伝子の発現が低下することが知られている.そこで,本研究では,atu2422の改変や,attKLMの改変やrepA遺伝子の発現を構成的にすることによりGABAの影響を抑え,形質転換能力が向上したアグロバクテリウムの作成も試みる.また,アグロバクテリウムのゲノムへ変異を挿入し,形質転換効率が向上したアグロバクテリウムの選抜を行なう.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度末までに,GABA分解能力を持ったアグロバクテリウム,エチレン前駆物質のACCを分解しエチレン発生抑制能及びGABA分解を同時に行なうアグロバクテリウムの作出に成功している.これらのアグロバクテリウムの形質転換能力を評価した.トマト品種'Micro-Tom'を用いて,ステイブルな形質転換への効果を評価した.GABA分解能を付与したアグロバクテリウム、エチレン発生抑制及びGABA分解能を付与したアグロバクテリウムにおいて,これらの能力を持たないアグロバクテリウムよりも形質転換効率は3-4倍程度向上した.GABA分解能のみ付与したアグロバクテリウムと,GABA分解能エチレン発生抑制能を同時に付与したアグロバクテリウムを比較したところ,両方を付与した菌株の方が,ステイブルな形質転換効率は高かった.また,これらのアグロバクテリウム菌株を用いて形質転換を行なった場合の倍数性への影響,挿入される遺伝子数の影響なども調査した.倍数性に関しては,ACC分解能GABA分解能を持たない菌株と同程度であった.コピー数に関しては,1コピー挿入された形質転換体の出現頻度が上昇した. エリアンサスを用いて,一過的な形質転換(遺伝子導入)への影響を調べた.GABA分解能,ACC分解能の単独及び同時に付与したアグロバクテリウムは,それらの能力を持たないアグロバクテリウムと比較して,遺伝子導入効率は向上していた.ここまでの進捗に関して論文2報にまとめる予定である. エリアンサスについては,ステイブルな形質転換系がないため現在ステイブルな形質転換系を構築も進めており,これが確立次第,ステイブルな形質転換への影響も評価する. 以上の結果をまとめて特許申請を行なった.
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Strategy for Future Research Activity |
GABAトランスポーター(遺伝子atu2422),attKLM, repAなどの変異体の作成に及びアグロバクテリウムのゲノムへのランダムな変異導入についても,今年度から実験を開始する. 研究進展の遅延は,人手不足によるものが大きいので,今年度以降は科研費を使用して研究補助員を雇用し,研究を推進して行く.GABA分解能,エチレン発生抑制能の単独あるいは同時付与したアグロバクテリウムの研究については,論文の形でまとめる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会発表などの旅費,及び論文投稿に関わる費用を計上していた.旅費に関しては,他の研究資金からサポートを受けることが出来たため,当初使用予定額よりも少額になった.論文投稿に関わる費用に関しても,同様に他の研究費からの支援を受けることが出来た. 今年度は,論文を2報投稿する予定なので,それに関わる費用として使用する.また,研究支援員を雇用するのに使用する予定である.
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Research Products
(7 results)