2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780019
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
南條 洋平 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究所畑作物研究領域, 主任研究員 (70457381)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ダイズ / 湿害 / 耐湿性 / 光 / 黄化芽生え / 嫌気代謝 |
Research Abstract |
日本におけるダイズは主に水田転換畑で栽培されている。播種期が梅雨期と重なる事情から発芽から出芽にかけての幼苗期に湿害の被害を受けやすく、これが収量の減少につながっている。耐湿性育種素材を開発するため、遺伝子工学・逆遺伝学的手法を活用する上で耐湿性を制御する鍵因子を同定する必要がある。本研究では冠水下ダイズへの光照射によって耐湿性が向上する現象に着目し、その湿害回避の機構および関連因子を明らかにすることにより、耐湿性制御因子を同定することを目的とする。 今年度は、生理的解析に向けた湿害評価系の改良およびこれを利用した経時変化の解析、そしてプロテオーム解析・トランスクリプトーム解析を行い、冠水下のダイズ芽生え中で光により量的変動を示すタンパク質およびmRNAを同定した。プロテオーム解析ではCombinatorial Peptide Ligand Libraries Beadsを用いた低含量タンパク質濃縮手法を併用したGel-enhanced LCMS法により約7,000のタンパク質の検出に成功した。さらに相対比較定量解析により顕著な量的変動を示す636タンパク質を同定した。トランスクリプトーム解析ではダイズゲノム情報を基にしたカスタムアレイを用いたマイクロアレイ解析により約8,600のmRNAの顕著な量的変動を同定した。同定したmRNAおよびタンパク質の量的変動の情報を統合し、バイオインフォマティックスの手法によりそれらの機能に関する情報を併せて解析を行った結果、光受容タンパク質フィトクロムAを介して情報が伝達され代謝調節が起こり、嫌気代謝の過程も調節されることを明らかにした。今後はさらなるバイオインフォマティック解析により調節される他の代謝系および制御系を同定し、関連するタンパク質・遺伝子群の推定とその効果について検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画は順調に進捗し成果の一部は論文として投稿中である。さらに次年度計画のバイオインフォマティクス解析および生理的解析に関しても着手中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果から推定された冠水下で光により調節される嫌気代謝を含む代謝系およびそれらを制御しうる遺伝子・タンパク質が耐湿性におよぼす効果を阻害剤または代謝物添加等による生理実験により検討する。また同時に遺伝子・タンパク質の発現変動をモニターし総合的に効果の検証を行い考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に実施した湿害評価系の改良およびこれを利用した経時変化の解析により高額試薬を使用する解析に供試する試料の最適化と効率化を図った。これにより生じた研究費および次年度の研究費は、交付申請時の計画通り、平成24年度の成果より推定された代謝系および遺伝子・タンパク質の耐湿性におよぼす効果の検証に使用する。
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Research Products
(2 results)