2012 Fiscal Year Research-status Report
収穫後のウンシュウミカンにおいて発生する異味異臭の原因成分の特定と発生機構の解明
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24780035
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
松本 光 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所カンキツ研究領域, 主任研究員 (20355407)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カンキツ / ウンシュウミカン / 収穫後温度 / 代謝 / アミノ酸 / 果実品質 |
Research Abstract |
ウンシュウミカン果実は、収穫後の保存条件により、異味異臭が発生し食味が大幅に低下するが、原因成分は未解明である。本研究では、異味異臭の原因物質を特定し、異味異臭の発生機構および制御方法を解明する。本年度は、果実を異なる温度(5,10,20および30℃)で約3ヶ月間、保存した後、食味調査およびLC/MS/MSによるメタボローム解析(糖、有機酸、アミノ酸を測定)を実施し、異味異臭の発生果実と非発生果実を実験的に作成して成分プロファイルを比較した。さらに、ウンシュウミカン品評会で食味審査を受けた363点の果実試料の成分プロファイルを分析し、果実に対する審査員の食味評価結果で、異味異臭の発生により食味が悪いと判定された果実試料に特徴的な成分を調査した。その結果、異なる温度で保存した果実の中で、10℃で保存した果実では、異味異臭の発生による食味低下はおこらず、収穫直後の果実に最も近い成分プロファイルを維持していた。一方、5℃で保存した果実では、2ヶ月後から異味異臭が発生して食味が大幅に低下し、アミノ酸の一種であるオルニチンとグルタミンが顕著に集積していた。これらのアミノ酸の集積は、品評会の食味審査で異味異臭の発生により食味が悪いと判定された果実試料でも観察された。以上の結果から、収穫後のウンシュウミカンにおける異味異臭の発生には、オルニチンとグルタミンの集積が関与している可能性があり、TCA回路から派生する、ウレアサイクル周辺の代謝系の変動が関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、収穫後のウンシュウミカンにおいて発生する異味異臭の原因物質を特定し、異味異臭の発生機構および制御機構を解明することを目的とする。一年目は、異味異臭の発生果実と非発生果実の成分プロファイルを比較し、異味異臭の発生に伴って変動する成分と代謝系をスクリーニングすることを研究目標としている。本年度の研究から、収穫後のウンシュウミカンにおける異味異臭の発生には、アミノ酸の一種であるオルニチンとグルタミンの集積が関与している可能性があり、TCA回路から派生する、ウレアサイクル周辺の代謝系の変動が寄与している可能性が示唆された。これらの研究成果は、国際学会で発表したほか、論文として発表し、国際誌(Journal of Agricultural and Food Chemistry)に掲載された。 以上の理由から、本年度の研究目的である、異味異臭の発生に伴い変動する成分の特定(オルニチンとグルタミンの集積)と代謝系のスクリーニング(TCA回路から派生する、ウレアサイクル周辺の代謝系)が達成されており、論文として発表されているため、研究は当初の計画通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に、LC/MS/MSによるメタボローム解析により絞り込んだ「異味異臭の発生に伴って集積するグルタミンとオルニチンおよびこれらアミノ酸が関連するウレアサイクル周辺の代謝系」を中心に、当該成分の前駆物質や成分由来の代謝産物(アミン類等)のほか、メタボローム解析では検出できなかった香気成分や中間代謝物等を正確に定量できる分析法(LCやGC/MS等を利用)を構築する。さらに、CE/MSによるメタボローム解析により、LC/MS/MSによるメタボローム解析では分析できない、解糖系の糖リン酸のほか、解糖系・TCA回路から派生する代謝物(アミノ酸やこれら由来の代謝物等)を網羅的に解析・比較する。本解析は十分な技術を有する専門業者に委託する。 これらの分析法を用いて、異味異臭の発生果実と非発生果実の成分プロファイルを分析・比較し、異味異臭の原因成分を特定する。さらに、特定した異味異臭成分を、異味異臭が発生していない果実の果汁に添加し、官能試験により、当該成分が異味異臭成分であることを確認する。 異味異臭成分を確実に含んでいる果実試料と、含んでいない果実試料からRNAを抽出し、マイクロアレイ解析やリアルタイムPCR等を用いて、異味異臭の発生に伴い変動する酵素群の遺伝子発現解析を行うことにより、異味異臭成分の生合成系を特定する。 その後、遺伝子発現変化と成分変化との関係を解析することにより、異味異臭の発生機構を解明し、異味異臭成分の集積に寄与する代謝酵素群を特定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、当初、異味異臭の発生果実と非発生果実のCE/MSによるメタボローム解析(受託解析)を予定していた。しかし、受託解析は高額であり、当該助成金を有効に活用するためには、この解析に供試する試料を絞り込む必要があった。そこで本年度は、まず、独自に構築したLC/MS/MS分析法(糖・有機酸・アミノ酸を測定)を用いて果実の成分分析を実施し、供試する果実試料を選定した。このため、本年度は当該助成金に残額が生じた。 次年度は、本年度の研究結果に基づいて選定、採取した果実試料について、CE/MSによるメタボローム解析を受託解析により実施するため、研究費を使用する。さらに、異味異臭成分を特定するための分析法の構築や、果実試料から成分を抽出し分析する為に必要な試薬や分析カラム等の消耗品の購入のほか、異味異臭の発生機構解明を解明するために必要な遺伝子発現解析に、研究費を使用する。これら実験を補助する人員に対する賃金として、研究費を使用する。得られた成果を、国内外の学会での口頭発表や論文発表を行うために必要な旅費および論文校閲費用として、研究費を使用する。
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Research Products
(2 results)