2012 Fiscal Year Research-status Report
植物のトバモウイルス認識機構における宿主ーウイルスタンパク質間相互作用の解析
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24780043
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Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
関根 健太郎 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生命科学研究部, 主任研究員 (30574058)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ウイルス認識機構 / タンパク質間相互作用 / トバモウイルス / 抵抗性タンパク質 |
Research Abstract |
植物の宿主特異的抵抗性における抵抗性タンパク質(R)による病原体非病原力エフェクター(Avr)の認識機構を分子レベルで理解する為,トウガラシ属のLタンパク質ファミリーと,これらに認識されるトバモウイルスの外被タンパク質(CP)をモデル実験系として,認識特異性並びに抵抗性反応強度とR-Avrタンパク質間相互作用のアフィニティの相関性について検証した.はじめに,認識可能なCPの範囲が最も広いとされるL4について,認識範囲が狭小化する変異体を得た.認識特異性を決定しているLeucine-rich repeat(LRR)ドメインの32個の推定βシートモチーフ配列xxLxLxxを個々にxALALAxとアミノ酸置換を導入し,それぞれの変異体のCP認識能を検証した.様々に認識範囲の狭小化が認められたが,モチーフ特異的にある種のCPが認識されなくなるのではなく,必ず認識されにくいCPから順に認識されなくなるという傾向が認められた.12番目のモチーフと32番目のモチーフのxALALAx変異体(L4LRR12A及びL4LRR32A)は, 共に,認識範囲の狭小化が認められ,さらに最も認識されやすいCP(ToMV-CP)に対する抵抗性反応強度が弱まっていた.この2つの変異を持つ二重変異体(L4LRR12A32A)は, さらに認識範囲が狭くなり,かつToMV-CPに対する抵抗性反応強度が弱まっていた.すなわち認識範囲と抵抗性反応強度は,[wild type L4 >L4LRR12A=L4LRR32A>L4LRR12A32A]となった.これらのRタンパク質とToMV-CPの相互作用を免疫共沈法で検証すると,どれも相互作用が認められ,そのアフィニティは,[wild type L4 >L4LRR12A=L4LRR32A>L4LRR12A32A]であり,正の相関が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究目標である,認識特異性並びに抵抗性反応強度とR-Avrタンパク質間相互作用のアフィニティについて正の相関が認められることを明らかにできた点から,研究の進捗はきわめて順調である.研究計画では,R-Avrタンパク質間相互作用のアフィニティを定量化するために,蛍光タンパク質Keima-Redを用いた蛍光相互相関分光法による分子間相互作用解析を行う予定であった.しかし,Keima-Red結合タンパク質が安定して発現しなかった為,この実験については断念せざるをえないが,代わりに,免疫沈降後のウェスタンブロットのRとAvrのバンドの太さを数値化し,相対的なアフィニティ強度を定量化した.また,次年度に向けて,LRRへの変異導入試験の結果から,LRRドメインの特定の部位ではなく,複数の箇所が複合的にCPとの相互作用を規定している可能性が示され,認識機構を構造生物学的に解析するための情報が得られた.さらに,L4における認識範囲の狭小化変異を, L3に導入して,その影響を調べたところ,同一の変異を導入したL4とL3で異なる認識特異性の狭小化への影響が異なることが分かった.L3とL4に共に認識されるPMMoV-CPにランダムに変異を導入し,認識を回避する変異体を得たところ,L3の認識を回避する変異と,L4の認識を回避する変異のアミノ酸置換部位が異なっていた.このことと併せて,L3とL4は同一のAvrタンパク質を認識するが,その認識する部位は異なり,これはL3とL4のLRRの立体構造の違いに起因するものと予想された.残す所,L3においても認識特異性がCPとの相互作用アフィニティにより規定されるかについて検証すれば,本研究課題の目的は概ね達成される.これらの実験は2年目に予定していたものであることから,当初の計画以上に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
トウガラシ属のL抵抗性タンパク質によるトバモウイルスの認識が,R-Avrの相互作用のアフィニティで決定することを,L3など他の抵抗性タンパク質についても明らかにする.具体的には,L3のLRRにxALALAx変異を導入した変異体で,認識範囲が狭小化したものについて,CPとの相互作用のアフィニティを野生型のL3と比較する. これまで,認識範囲が狭小化する,機能欠損変異体の解析をしていたが, 機能欠損変異体の場合,アミノ酸の極性の差異や立体構造への影響など,どのようなアミノ酸置換の影響が理由で認識能が失われているかの考察が難しく,さらに詳細に解析するにも,予想以上に複数の認識範囲が狭小化したL4LRR変異体が得られた.そこで2年目は,反対に認識機能を獲得する変異体の作出を試みる.LRRについては複数箇所が認識に関わっていることが示唆されたため,サイズが大きくランダム変異のスクリーニングをすることはあまり現実的ではない為,CPについて被認識機能を獲得する変異体の作出を試みる.PMMoV-CPはL1, L2, L2bに認識されない. これらの抵抗性タンパク質に認識されるようになるPMMoV-CP変異体をスクリーニングする.このスクリーニングには,L3やL4の認識を回避するPMMoV-CP変異体のスクリーニングに用いたライブラリーが利用できる.被認識能を獲得した変異体CPは,Lタンパク質との相互作用のアフィニティが強化されていると考えられる為,この可能性について検証する.これらのデータを加え,論文としてまとめる. L-CPタンパク質複合体の立体構造モデリングについては,単純な構造モデル対構造モデルのドッキングシュミレーションが可能かどうかについて検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主な使用用途の内訳としては,1)消耗品費,2)人件費,3)国内旅費,4)その他,に分かれる.設備備品への研究費の使用予定はない.以下にそれぞれの使用計画を記す. 1)消耗品費としては,主にタンパク質の機能解析に用いるウェスタンブロットや免疫沈降の試薬と日常的に使用するチューブやチップなどのプラスチック用品に使用する.加えて,実験植物の育成に必要な培養土,ポットなどの消耗品費も必要である. 2)次年度初めは,遺伝子クローニングやPMMoV-CPの機能獲得変異体のスクリーニングと実験作業量が多いため,実験補助員を4ヶ月間雇用して効率化を図る. 3)得られた研究成果の発表と情報収集を目的として植物病理学関連の学会に参加する. 4)成果を論文にまとめ発表する為の諸経費.
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Functional differentiation in the leucine-rich repeat domains of closely related plant virus-resistance proteins that recognize common avr proteins.2012
Author(s)
Sekine KT, Tomita R, Takeuchi S, Atsumi G, Saitoh H, Mizumoto H, Kiba A, Yamaoka N, Nishiguchi M, Hikichi Y, Kobayashi K.
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Journal Title
Molecular Plant Microbe Interactions
Volume: 25
Pages: 1219-1229
DOI
Peer Reviewed
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