2013 Fiscal Year Annual Research Report
新規な神経活動依存的遺伝子を用いた昆虫の性フェロモン神経回路の可視化と機能解析
Project/Area Number |
24780047
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
木矢 剛智 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (90532309)
|
Keywords | カイコ / ショウジョウバエ / Hr38 / フェロモン / 神経活動 / 昆虫 / 脳 / 初期応答遺伝子 |
Research Abstract |
外界からの感覚情報は如何にして脳内で処理され、適切な運動指令や行動として出力されるのか?この疑問に答えるために本研究では、入力(感覚情報)と出力(性行動)が明確な昆虫の性フェロモンに着目し、申請者が新規に同定した神経活動依存的に発現する遺伝子Hr38を利用することで、性フェロモン情報を伝達する神経細胞を可視化することを目的とした。 まずカイコガを用い、性フェロモン(ボンビコール及びボンビカール)によって刺激した際に脳のどの領域で神経活動が起きているのかということを調べた。その結果、触角葉(嗅覚中枢)・食道下神経節(運動中枢)・キノコ体および前大脳(高次中枢)において、性フェロモン刺激依存的に神経活動が起こることを見出した。昆虫の脳で性フェロモンに反応する神経細胞の分布を包括的に明らかにしたのは本研究が世界で初めてであると考えられる。次にキイロショウジョウバエの脳においても性フェロモン刺激に応答する神経細胞の分布を調べた。ショウジョウバエにおいて性行動を誘発する揮発性の性フェロモンは未同定のため、断頭した未交尾メスを用いて刺激を行った。その結果、ショウジョウバエの脳においても、触角葉・キノコ体・食道下神経節・前大脳において、メス刺激依存的な神経活動が検出された。ここで見られた神経活動が性フェロモンに依存することを、性フェロモン感知に必要な触角及び前足前端の外科的な除去や、嗅覚変異体orco mutantや性フェロモン受容体ノックアウト系統(Or47b mutant)を用いて確認した。これらの研究成果をCurrent Biologyに出版した。 これらの結果を受けて、Hr38の発現を検出することの出来る遺伝子組換えカイコガ及びショウジョウバエの作製を行った。これらの系統はある程度順調に作出出来ており、今後解析を行うことで、神経活動の起こった細胞の形態を可視化できると考えられる。
|