2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780054
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
古川 純 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40451687)
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Keywords | ミヤコグサ / QTL解析 / 亜鉛 / ZIP2 |
Research Abstract |
本年度は鉄欠乏状態にあるミヤコグサを用いて同時に他の元素の養分環境も変化させることにより、ミヤコグサのマルチミネラル集積機構が主に鉄の欠乏により誘導されるものであるか、あるいは個々の元素についての応答が個別に誘導されているものであるかについての知見を得るための解析を中心に行った。ミヤコグサB-129系統の植物体において鉄欠乏状態にあることを示すマーカー遺伝子のIRT1が高発現する条件下で、水耕液中の亜鉛濃度を通常、欠乏(無添加)、過剰条件に設定して4週間生育させ、その後亜鉛の吸収、輸送、蓄積について解析を行った。亜鉛動態についてはその詳細を日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所に設置されているリアルタイムイメージング装置であるPETISを用いて、陽電子放出核種のZn-65による非侵襲での解析を行ったところ、欠乏区では亜鉛のきわめて速やかな地上部組織への輸送が認められたものの、過剰区では投与した亜鉛の多くが根部にとどまっていた。これらの亜鉛条件ではIRT1の発現に有意な変化が認められず、B-129は鉄欠乏状態が維持されていると考えられ、地上部への亜鉛集積は亜鉛環境の変化によってより厳密に制御されることが明らかとなった。また、水耕液中の鉄濃度を増やし、鉄欠乏を緩和した植物体を用いても亜鉛の吸収量に顕著な変化が認められなかったことから、B-129の示す地上部への優先的な亜鉛輸送に対する鉄欠乏応答機構の寄与が少ないという可能性が示された。また、同条件における遺伝子発現解析として、QTL上に座乗している金属輸送関連候補遺伝子の発現を比較したところ、細胞膜局在型の亜鉛取込み輸送体であるZIP2をコードする遺伝子の発現がB-129で大きく変動していることが示された。しかしながらこれまでの先行研究による知見とは異なる発現傾向を示しており、更なる解析が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は亜鉛集積に寄与する候補遺伝子として、QTL領域に含まれていた12の金属輸送関連遺伝子を対象として行った発現解析の結果から注目された、ZIP2を中心とした解析を行った。本研究で着目したZIP2と最も相同性の高いタルウマゴヤシのMtZIP2による先行研究と比較すると、亜鉛の欠乏、過剰に応答する際のZIP2の発現パターンが一致せず、傾向が大きく異なっていた。しかしながら亜鉛の地上部への輸送活性について比較すると生育時の亜鉛環境に対応した同一の傾向を示していたことから、現在着目しているZIP2とは異なる遺伝子を用いて種間で類似の亜鉛輸送を行っている可能性がある。発現パターンが輸送と一致しないことから、ミヤコグサのタグラインであるLORE1遺伝子破壊株のリソースに含まれているZIP2欠損体を用いた解析を行うための種子の増殖を行っている。また、ミヤコグサB-129とMG-20の比較から得られたB-129の地上部への亜鉛集積を制御すると予測される16ヶ所のQTL領域については、遺伝子発現のみならず系統間の配列の違いを明らかにするために次世代シークエンサーの使用も視野に入れつつ準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在着目しているZIP2について、ミヤコグサLORE1によるZIP2の遺伝子破壊株を用いた金属集積特性の解析を行い、B-129におけるマルチミネラル集積の原因遺伝子の一つであるかについて確定する。その上で完全長を含む発現コンストラクトを用いた異種発現系を用いた金属輸送活性の解析を行う。またin situ hybridizationなどの手法によりZIP2のミヤコグサにおける発現部位を明らかにすることで、導管からの金属イオンの再吸収を介した根と地上部間のイオン輸送制御について新たな知見を得る。また、B-129とMG-20を土耕により生育し、植物における必須元素以外の金属含量についてもICP-MS等による解析を行う。これによりB-129で活性化されているマルチミネラル集積能によって影響を受ける金属元素を網羅的に解析する。亜鉛蓄積に関しては鉄欠乏による制御の寄与が少ない可能性が示されたため、集積量に差が見られているナトリウム、マンガン、ニッケル、銅についても同様の確認を行うと同時に、鉄欠乏により統合的に制御される系から共通のシグナル伝達機構について知見を得る。
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