2012 Fiscal Year Research-status Report
放射性同位体を用いた植物体内のマグネシウム移行動態と輸送体の解析
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24780056
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田野井 慶太朗 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (90361576)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マグネシウム / イネ / 植物 / 放射性同位体 |
Research Abstract |
植物実験に先立ちMg-28を安定供給できる体制を整えた。Mg-28は本申請者が客員協力研究員として共同研究を実施している放射性医学総合研究所の分子イメージング研究センターで製造・精製を行った。製造後は東京大学農学部放射性同位元素施設へ輸送し、当該施設内でイネ及びシロイヌナズナへ供試する環境整備を行った。 Mg-28トレーサー実験の対象としてイネおよびシロイヌナズナを用いた。特に、植物が小さくてハンドリングに困難な点があるシロイヌナズナにおいて、Mg-28を供試する実験系を構築した。一般にシロイヌナズナを生育するのに使用されるロックウールやagarにはMgが無視できない量含まれるので、Mgトレーサー実験には適していない。そこで、スポンジとネットを使った栽培方法にて実験を行うための検討を行い、イネ同様にシロイヌナズナでもMg-28の投与が再現性よくできるようになった。 野生型株について、Mg-28吸収実験を行った結果、イネ、シロイヌナズナともに、水耕液中のMg濃度が低い場合には、ミハエリスメンテン様の曲線を描く吸収動態となることがわかった。さらに、イネとシロイヌナズナでは吸収曲線が異なることもわかった。水耕液のMg濃度が高い領域においては吸収速度は水耕液中Mg濃度に従って直線的に高くなっていくことから、拡散によりMgが吸収されることがわかった。 Mg欠乏の植物においてMg吸収様式が変化するか、イネを用いて検証した。その結果、Mg欠乏処理をしたイネでは、Mg吸収活性が高まっているような吸収曲線が得られた。さらに検証した結果、Mg欠乏処理後、短時間(30分以内)Mgを供給した後、Mg-28実験を実施したところ、Mg欠乏処理をしていないサンプルとほぼ同様の吸収速度を示したことから、Mg欠乏によりMg吸収活性たかまる、という現象がないことがMg-28トレーサー実験から生理学的に示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mg-28の製造・精製は当初の研究目的に記載の通り順調に進展した。この作業は、放射性医学総合研究所の加速器で製造・精製したものを東京大学大学院農学生命科学研究科に持ち帰って実験する、という過程を経るため、その流れを実験開始直後に確立できたことは、今後の研究進展に重要なことである。 イネに加え、シロイヌナズナへの投与方法が確立できたことも重要なことである。シロイヌナズナは通常、アガロースゲルに播種されプレート内で生育するか、バーミキュライト等で生育するのが通常である。しかし、アガロースやバーミキュライトともにマグネシウムを多く含むことから、本実験には適しなかった。そこで、スポンジやネットを組み合わせて、安定してシロイヌナズナの水耕栽培ができる栽培環境を整えた。 イネやシロイヌナズナにおいて、吸収活性評価を行った。その結果、低濃度域においてはMgは能動輸送により吸収されていることが、生理学的に明確に示すことができた。このように、実際に同位体等により輸送メカニズムを示すことは、分子メカニズムの解析に先立ち重要なことであると考えている。一方、高濃度域においては、水耕液濃度を高くするほど吸収量は直線的に増加したことから、吸収は主に拡散であると思われる。 oocyteの実験については、既存装置のセットアップにとどまったが、他の輸送体によるMg輸送の可能性については、現在様々な角度から検討および各種実験を実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、Mg-28の製造・精製を定期的に実施し、Mg-28のトレーサー実験を軸に本研究を推進していく。既にシロイヌナズナやイネの変異体の解析をスタートしている。今後も、変異体のトレーサー実験を体系的に数多くのラインをこなしていく。その中で、Mg輸送に役割を果たす分子の特定を目指す。 また、Mgは陽イオンであることから、Mg輸送を考える上では、Mg輸送体ばかりを着目しては見逃している物が存在すると思われる。次年度は、申請時の計画書に記載されているように、カチオン輸送体を広く視野にいれた解析を推進する。これらは、分子生物学的手法による解析も重要ではあるが、本研究では、あくまで輸送される物質であるMg等、イオンの動態解析を中心に解析を進めたいと思っており、その過程においては、他の研究者との情報交換や共同研究等も視野にいれた研究活動を展開したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(10 results)