2013 Fiscal Year Annual Research Report
集光機能の改良に基づく無機栄養ストレス耐性作物の創出
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24780060
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
齋藤 彰宏 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (10610355)
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Keywords | 鉄欠乏 / オオムギ / 集光性アンテナ / タンパク質リン酸化 / Lhcb1 / アイソフォーム / チラコイド膜 / 形質転換 |
Research Abstract |
植物の要素障害は最終的に光合成系の破たんを誘導する。これに対して、オオムギは長期の鉄欠乏条件下で、光阻害を回避でき、炭素同化能も維持できる。我々は、長期鉄欠乏オオムギの地上部の転写産物の中から発現量の増加した遺伝子の一つとして光化学系II集 光性アンテナHvLhcb1.12を同定した。 今回、鉄欠乏オオムギのLhcb1タンパク質の挙動を調べた結果、このタンパク質が鉄欠乏下では高度にリン酸化されて、グラナからストロマラメラへ劇的に局在性を変化させることが明らかとなった。興味深いことに、鉄欠乏オオムギのLhcb1リン酸化様式は一般的な光環境適応機構(ステート遷移)でみられる制御とは関連がなく、光条件よりも鉄欠乏条件に特異的に誘導されるものと考えられた。また、このことからオオムギには未知のLhcb1リン酸化因子が存在する可能性が強く示唆される。 一方、オオムギには17個のHvLhcb1遺伝子が存在することを突き止めた。これは現在知られている高等植物のLhcb1のホモログ数では最大である。そこで、オオムギの全HvLhcb1タンパク質をIEF/SDS-PAGE二次元電気泳動で分離し、nano-LC-MS/MS解析によって個々にアイソフォームの定量を試みた。この結果、主要なHvLhcb1アイソフォームの同定に成功し、鉄欠乏条件でHvLhcb1.12タンパク質が顕著に増加することを確認した。これにより、オオムギが無機栄養環境に合わせ、異なるHvLhcb1アイソフォームを使い分けているという仮説が立証された。 以上のような生化学的解析に加え、鉄欠乏応答性HvLhcb1の役割を検証するために、イネにオオムギのHvLhcb1.12遺伝子を導入し解析を行った。その結果、強光下で栽培を行った場合には、ベクターコントロール区に比べ分げつ数と穂数が有意に増加し、収量も25%増加した。これらの結果から、少なくとも強光ストレス条件下で本遺伝子が生育向上に貢献することが明らかになった。
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Research Products
(13 results)