2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780063
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
増中 章 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所飼料作物研究領域, 主任研究員 (80466010)
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Keywords | 植物生育促進菌類 / ミヤコグサ |
Research Abstract |
ミヤコグサとゆるい共生関係を構築する糸状菌Trichoderma koningii(Tk)が共通共生シグナル伝達経路(common signaling pathwa y:CSP)を利用しているのか検証するために、ミヤコグサの野生型および共生変異系統(pollux-、ccamK-)の根部にTkを接種し、病害抵 抗性関連遺伝子である4つのイソフラボノイド型ファイトアレキシン(ベスチトール)生合成遺伝子、PKR1、IFS、HI4'OMT、PTR1の発現誘導 パターンをノーザンブロット法により解析した結果、IFS, HI4’OMT, PTR1で発現誘導が起きていることを確認してきた。今年度は、ミヤコグサのCSPの前後に位置する菌根形成シグナル経路に遺伝的変異を有するME778およびME2329を用いて、糸状菌(菌根菌)共生経路が生育促進菌類(PGPF)であるトリコデルマ菌のゆるい共生関係構築に必要であるか検討した。 トリコデルマ菌をミヤコグサの幼苗根に感染させるとミヤコグサのCSP変異系統に感染させた場合と同様に、PKR1遺伝子の発現には誘導抑制がかかり、他の3つの遺伝子(IFS、HI4'OMTおよびPTR1)では発現誘導が見られた。 これら発現誘導が復活した3つの遺伝子の発現誘導パターンはミヤコ グサとは不親和を示す他のPGPFであるPenicillim菌やFusarium菌接種時と類似していることからも、ME778およびME2329系統ではトリコデルマ菌との共生関係構築が拒絶されたことが示唆された。さらにトリコデルマ菌の共生能欠損菌株作成のための遺伝子組み換え法の開発を行った。本菌への遺伝子導入には、ポリエチレングリコール6000を用いた場、最も効率が良くなったが、遺伝子細胞導入試薬リポフェクチンを使用すると効率は悪化した。これらの方法により遺伝子導入が可能となったが、遺伝子導入菌株のゲノムサザン解析から、導入遺伝子の挿入位置は、比較的決まった場所であること、ランダムな遺伝子導入は難しいことが予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題推進者の移動先には本研究課題に不可欠な分析機器や蛍光顕微鏡が整備されていないこともあり、変異系統におけるファイトアレキシン生合成遺伝子の発現応答まで終了したが、変異系統根への菌糸 の侵入の確認およびファイトアレキシンの生産の確認が未だに残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
トリコデルマ菌のCSPや菌根菌共生経路利用を検証するため、引き続きミヤコグサの共生変異系統(CSP変異体:pollux-、ccamk-、ME778、ME2329)の根部にトリコデルマ菌を接種し、3、5、7日後に根面上の菌糸の定着を光学顕微鏡により解析する。さらに、根内部への侵入を確認するために接種根 のパラフィン切片を作製し、菌糸侵入を検証する。 トリコデルマ菌の遺伝子変異体作製のため、開発したマーカー遺伝子を組み込んだ糸状菌用の形質転換用ベクターを用いて、プロトプラスト-PEG法により形質転換体を作製し、遺伝子の組み換え領域の解析を行う。作製する遺伝子変異体のミヤコグサのファイトアレキシン生合成遺伝子発現誘導能およびファイトアレキシン分泌誘導能の解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ミヤコグサのファイトアレキシン分析機器の都合により、作出したトリコデルマ菌の遺伝子組換え体接種によるファイトアレキシン分泌の分析が実施できなかったため、実験補助員の人件費に余剰が生じた。 トリコデルマ菌の非遺伝子組換え体と組換え体の、ミヤコグサの両系統(野生系統と共生変異系統)における感染動態を解析する予定であるが、解析組合せ数が多く補助人員が必要となるため、本実験に対する補助人員一人、2か月分に使用する予定である。
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