2012 Fiscal Year Research-status Report
細菌の細胞間交信・細胞集合における環境シグナル感知伝達機構の解明
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24780070
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小笠原 寛 信州大学, ヒト環境科学研究支援センター, 助教 (30535232)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 大腸菌 / 転写制御 / CsgD / CsgA / Curli |
Research Abstract |
H24年度は当初計画通り、(1)CsgD発現に関わる細胞の物理的及び化学的シグナル応答機構の解明、(2)転写因子CsgD発現制御に関わる転写制御機構の全容解明、(3)バイオフィルム形成過程の細胞におけるCsgD支配下遺伝子群の発現制御の解明を目指し研究を実施した。(1)についてはcsgD発現制御に関わる環境シグナル感知において主要な役割を果たしている二成分情報伝達系センサータンパク質とそれら情報伝達に関わるリポタンパク質を探索するために、大腸菌ゲノム上でCsgD支配下遺伝子群のプロモーター領域をlacZと融合させたレポーター株に、リポタンパク質をコードする遺伝子がクローニングされたプラスミドコレクションを導入し、これら遺伝子発現に影響を与える蛋白の同定を試みた。またGenomic SELEX法を用いた網羅的な解析から、csgD制御に関わる転写因子の同定を試みた。(2)については、これまでにcsgD発現制御への関与が示唆されているCRP(cAMP結合蛋白質)について、公開されているChIP-chip assayのデータを元にcsgD制御に関わるCRP標的遺伝子の探索を試みた。またcsgD発現制御に関与することが示唆されている転写因子のcsgDプロモーターにおける結合部位の同定を試みた。(3)についてはCsgD抗体を用いたChIP-chip解析のデータを元に、機能未知遺伝子群の発現制御について調べた。また平成25年度に予定していたCurli発現を認識する表層ストレス応答機構の解明について前倒しで研究を進め、Curli発現時に誘導される遺伝子群の探索及びそれら発現制御に関わる分子機構の解明を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)ではGenomic SELEX法を用いた網羅的な解析から、二成分制御系BasS/BasRが新たにcsgD制御に関わることを明らかにした。またcsgD標的遺伝子レポーター株を用いた解析から、csgD発現制御に関わるシグナル感知に関与する二成分制御系およびペリプラズムリポ蛋白を新たに同定するまでには至っていないが、それら研究を行うために必要なプラスミドコレクションの準備、およびcsgD発現やCsgD支配下遺伝子発現を確認するためのlacZレポーター株の作製が完了しており、H25年度においても継続して実施する。(2)については、これまでにcsgD発現制御への関与が示唆されている転写因子のうちCRP(cAMP結合蛋白質)について、公開されているChIP-chip assayのデータを元に解析を行い、csgD発現制御に関わる転写因子をコードする遺伝子がその支配下にあることを見出した。また莢膜合成制御に関わるRcsBがcsgDプロモーターへ結合することなどを明らかにした。(3)についてはCsgD抗体を用いたChIP-chip解析のデータを元に、機能未知遺伝子群の発現制御について調べ、新たに2種類の機能未知遺伝子がCsgDの制御下にあることを明らかにした。また平成25年度に予定していたCurli発現を認識する表層ストレス応答機構の解明について前倒しで研究を進め、Curli発現時に誘導される遺伝子発現を複数確認し、現在これら遺伝子群の発現誘導機構およびCurli発現時における役割解明に向けて研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
CsgD支配下機能未知蛋白のバイオフィルム形成細胞における機能解明を目指し、(1)大腸菌機能未知蛋白のバイオフィルム形成過程における細胞局在およびバイオフィルム構造解析、(2) CsgD発現シグナル伝達に関わる細胞表層蛋白の局在部位の解明、(3) Curli発現を認識する表層ストレス応答機構の解明を目指し以下の研究を実施する。(1)については平成24年度に新たに見出したCsgD標的機能未知遺伝子を含め、CsgD依存的に発現制御される遺伝子群の機能を明らかにするために、大腸菌細胞内でそれら蛋白の細胞内局在観察を実施し、それら機能未知遺伝子欠損株のバイオフィルム形成、およびCurli発現に対する影響を観察する。(2)については 平成24年度に引き続きCsgD発現制御に関わるシグナル感知に関与する二成分系センサー蛋白とペリプラズムリポ蛋白の同定および相互作用解析を行い、これら蛋白の細胞内局在観察を実施する。(3)については CsgA蛋白発現時に誘導される新規の遺伝子発現を複数確認できたことから、平成25年度はこれら遺伝子群の発現誘導機構およびCurli発現時における役割について解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度の研究費の主要部分は、酵素類(制限酵素、塩基配列決定試薬)、合成プライマー、蛍光標識物質、一般試薬、ガラス器具類、プラスチック類、培地等である。旅費は主として国内の学会発表(日本分子生物学会、日本農芸化学会、日本ゲノム微生物学会)、国外の学会発表の経費で、その他は、学会参加費、論文投稿費用経費である。
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[Journal Article] A novel regulator RcdA of the csgD gene encoding the master regulator of biofilm formation in Escherichia coli.2012
Author(s)
Shimada, T., Katayama, Y., Kawakita, S., Ogasawara, H., Nakano, M., Yamamoto, K., Ishihama, A.
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Journal Title
Microbiologyopen
Volume: 1
Pages: 381-394
DOI
Peer Reviewed
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